ガソリン車はどうなの? 新型「トヨタ・ヴォクシー」試乗 価格も走りも検証

公開 : 2022.05.23 21:15  更新 : 2022.05.23 21:55

ちょっと違うGA-Cプラットフォーム

しかも踏み増し時の加速反応のよさは内燃機車ではトップクラス。

初期トルクも大きめであり、一般的な走行パターンならペダルストロークの半分にも充たない踏み込み量でこなしてしまう。俊敏に反応する2.5Lエンジンのように錯覚するほど。

新型トヨタ・ヴォクシーS-Zの2列目シート(ガソリン/7人乗り/内装色ブラック)
新型トヨタヴォクシーS-Zの2列目シート(ガソリン/7人乗り/内装色ブラック)    池之平昌信

悪く言えば一気加速で馬脚を露わすタイプなのだが、性能確認のための意図的な急加速以外で「馬脚」を感じることはなかった。

また、先代でプラットフォームを一新したが、新型で再び一新してカローラ/プリウスに採用されているGA-Cプラットフォームとなった。

ただ、GA-Cではかなりイレギュラー。先代で採用した細長い超扁平燃料タンクやFF/4WD車ともにリアサスへのトーションビームサスの採用など、実質的にはヴォクシー/ノア専用という成り立ちだ。

先代からの技術の流れや開発要点を見ても力作だが、試乗印象も同様だった。

以前のトヨタの1BOX系は高速操安性を定員乗車まで保証するため、ハードサスセッティングが基本。代を重ねる毎に乗り心地を改善してきたが、操安を妥協したわけではない。

乗り心地/コーナリングについて

加減速やうねりによる前・後輪の荷重変動が抑えられ、車体の揺動が少ない。

ロールの使い方もしなやかで落ち着いている。

新型トヨタ・ヴォクシーS-Z(ガソリン/ホワイトパールクリスタルシャイン/2WD)
新型トヨタ・ヴォクシーS-Z(ガソリン/ホワイトパールクリスタルシャイン/2WD)    池之平昌信

回頭速度がラインと一致し、前・後輪荷重も落ち着いているので横Gも安定。ドライバーにとっては修正操作少なく、安心感の高い操縦感覚であり、同時にコーナリング中に乗員の頭を振り回すような挙動が少ない穏やかさが長所となる。

少人数乗車での乗り心地も良好。ストロークが深まるほどに強腰になるようなサスチューンなので小ストローク域でもしなやか。

55扁平の17インチのせいか小さな段差で若干角当たりの硬さを意識するが、走りの質感を損ねるほどでもなく、安定感と穏やかさが心地よい。

回転変化や吸排気音の変化が少ないパワートレイン周りの静粛性と相まって、穏やかな心持ちで乗っていられる。

ガソリン車を推せるワケ

上級設定のS-Zに総額約92万円のOP装備。試乗モデルの価格は締めて約431万円。同グレードのハイブリッド車との車両本体価格差は35万円である。

価格差を燃費で取り返すのは難しいにしても、最上級グレード+フルOPの予算建てなら、頑張って動力性能面でもメリットのあるハイブリッド車を選びたいというのが人情だろう。

新型トヨタ・ヴォクシーS-Zの荷室(ガソリン/2WD/内装色ブラック)
新型トヨタ・ヴォクシーS-Zの荷室(ガソリン/2WD/内装色ブラック)    池之平昌信

ヴォクシーのガソリン車はまとまりがいい。1BOX型の標準的なユーザーの現実的な用途を背景とした機能や運転感覚、装備設定を揃えたワイドスイートスポット型。この実践力の高さをコスパで量るなら、シリーズではベーシックとなるS-Gをベースに必要度に合わせて無駄なく選択するのが、実用コスパのベストと言える。

ハイブリッド車を選んでいくつかの利便快適OPを諦めるなら、ガソリン車でOP充実のほうが実践的でもある。

トヨタセーフティセンスの高機能化もあって先代よりも価格は上がっているが、機能や性能向上を図ってなお先代同様の予算内に収まるよう開発されたのも新型の特徴の1つ。

そのコスパ重視の設計が最もよく現れているのが同車のガソリン車であり、リピートユーザーならなおさら。高価格仕様を追わなければ魅力半減というタイプのモデルではないのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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