メルセデス・ベンツS500クーペ 4マティック
公開 : 2014.07.04 23:45 更新 : 2017.05.13 12:51
■どんなクルマ?
CLクラスではなく、Sクラス・クーペというかつてのモデル名が充てられたこのクルマは、古典的なモデル名に反して、高精度かつ新しいトリックがふんだんに盛り込まれる。コーナリングをする際に車体が傾かないシャシーがその代表である。
9月には英国でも販売される手はずになっており、価格は£95,000(1,407万円)でかつてのCL500に替わるモデルとして期待されている。8年ぶりのニューモデルというわけだ。
■どんな感じ?
先代よりもさらに細部に至るまで独特な流麗さをもつこのクルマは、大きな2ドア・モデルとしてメルセデス・ベンツの頂点と呼ぶに相応しい。単にSクラスの2ドア版としてでなく、別個のモデルとして捉えて頂いていいだろう。
ダッシュボードのデザインやトリムなどはSクラス・セダンのものを引き継いでいるために、眼を見張るほどの美しさはインテリアまでに至る。
他に類を見ないほど快適で、新しいヘッドアップ・ディスプレイのおかげもあり、これ以上の車が市場に存在するのだろうかと思えるほどに室内環境は上質だ。後部座席のスペースは拡大されたが、後方にさらりと収束するボディ・ラインのおかげでトランクの容量は90ℓにまで縮小される。
組み合わされる4.7ℓツイン・ターボV8エンジンに欠点を見出すことは難を極め、CL500比+19psの454psを発揮する。
S63 AMGクーペに見られる低回転での圧倒的な押し出しは無いが、それでもわずか1800rpmで発生する71.4kgmの最大トルクに力不足だと感じることはないし、どの回転域においてもクリーミーかつレッドライン付近でも力強さがある。
メルセデス・ベンツ製の7速オートマティック・ギアボックスは、コラム・シフトとパドル・シフトの双方から指令を与えることができ、本来シフトがあるべきところは収納スペースに取って代わった。オートマティックそのものは、大きなサルーン・クーペのに相応しい低速での静けさと、高速での力強さを巧みに引き出す味付けになっている
英国で販売される折には、はじめから決定的なオプションを欠くことが決定済みだ。それは4マティックなる四輪駆動版のモデルで、残念ながらセダンと同じく右ハンドルのモデルには後輪駆動モデルしか用意されない。
0−100km/h加速に要するタイムはメルセデス・ベンツの公表値で4.6秒、これはCL500の4マティックよりも0.3秒速いということになる。
今までのクーペとは走りにおいても一線を画するのである。
最新の電子制御ステアリングと幅が大きくなった新開発シャシー、そして更に進化したエア・サスペンションはカメラとセンサーと共同作業を行い、路面の状況を常にスキャンしながら最適なスプリングとダンパーの硬さを導き出すことによりボディを平行に保ち、素晴らしいアジリティーを達成するのである。もちろんS63 AMGには一歩譲るのだが、それでもダイナミズムと従順さをかなり高いレベルで両立させられている。
知性に富んだシャシーは極上な乗り心地をあたえてくれる。とにかく素晴らしいのだ。その上抑制されたウインドウ・ノイズはかなりのスピードにおいても、快適に感じさせてくれるはずだ。
またメルセデスが情熱を費やしたアクティブ・ボディ・コントロールに関しても触れずにはいられない。これは、自転車の走行速度にちかい15km/hから180km/hに至るまで、コーナリング時に生じるボディの傾きをコントロールする為のシステムで、ドライバーとパッセンジャーの双方が横方向の力を感じずに済むのだ。乗り心地はもちろんのこと、コーナリング・スピード向上にも一役買うことになり、敏捷性もひとつ上のレベルに引き上げられている。
■「買い」か?
特別なクルマをメルセデス・ベンツが作り上げたと言っていいだろう。
眼を見張るほど美しい上に、どんな距離を走ったとしても疲れ知らずで、同時にサイズを感じさせないエンターテイメント性に富んだハンドリングを兼ね備える。
どこをとっても、先代のCL500より遥かに魅力的になったのである。
(グレッグ・ケーブル)
メルセデス・ベンツS500クーペ 4マティック
価格 | £95,000(1,665万円) |
最高速度 | 250km/h |
0-100km/h加速 | 4.6秒 |
燃費 | 10.0km/ℓ |
CO2排出量 | 232g/km |
乾燥重量 | 2090kg |
エンジン | V型8気筒4663ccターボ |
最高出力 | 454ps/5250rpm |
最大トルク | 71.3kg-m/1800rpm |
ギアボックス | 7速オートマティック |