BMC特有の不思議な魅力 直列6気筒のオースチン3リッターとウーズレー・シックス 後編

公開 : 2022.06.11 07:06

当時としては珍しい反応の良さ

直列6気筒エンジンは、2台とも静かで滑らか。ナイジェル・フォレスト氏がオーナーの、後期型オースチン3リッターは筆者の記憶以上に活気がある。マニュアル・ギアなら一層運転を楽しめそうだ。

オプションだったボルグワーナー社製の3速ATは、目立たないように変速をこなす。だが、ドライブへ入れようとするとデフからゴツンと振動が出る。当初からの癖だった。

ウーズレー・シックス(1972〜1975年/英国仕様)
ウーズレー・シックス(1972〜1975年/英国仕様)

シックスにも3速ATが載っている。トルクコンバーターのノイズが、時折エンジンよりうるさくなる。アクセルペダルを傾けてキックダウンを誘っても、目立って加速は良くならない。エンジン音が大きくなり、燃料を多く燃やすだけだ。

3リッターにはパワーステアリングが標準装備で、低速域では扱いが楽。スピードが乗ってきて、フロントタイヤのグリップが抜けても、感じ取りにくい。アンダーステアが隠される。

ところが世代の新しいシックスでは、オプションだった。ギャロウェイは、購入後に電動パワーステアリングを後付けしたそうだ。

ボディロールは小さく、アンダーステアも抑えられている。ドライバーの操作に対し、穏やかで忠実に向きを変えてくれる。1970年代初頭のファミリーサルーンとしては、珍しい反応の良さといえる。

FFらしくシックスの操縦性は小気味いいが、それでも、後輪駆動の3リッターには及ばない。乗り心地も、車重がかさむためかよりフラット。ハイドラスティック・サスペンションを備えるモデル特有の、独特の弾力も感じられる。

強く惹かれる英国車特有の不思議な魅力

誕生から50年以上を経ても、大切にしてくれるオーナーと巡り合うことができた2台。オースチン/モーリス2200とウーズレー・シックスは、堅牢さや実用性に重きを置くファミリー層にとって、当初から魅力的な選択肢となってきた。

イシゴニスが生み出した、ミニとの直接的な関係性に同調する人も多かった。市場に適したモデルを提供しようとした、BL社の合理的な判断がうまく働いていた。

ダークグリーンのオースチン3リッターと、ダークブルーのウーズレー・シックス
ダークグリーンのオースチン3リッターと、ダークブルーのウーズレー・シックス

一方のオースチン3リッターも特徴的な存在ながら、BMC社とその後のBL社を支えることはできなかった。整合性に欠けたクルマの成り立ちは、複雑化した同社の体制も反映していた。不具合は少なくなく、ブランド自体を傷つける存在でもあった。

自ずと希少性を高めてしまった3リッター。それでも、この時代の英国車特有の個性に、筆者は強く惹かれてしまう。ウーズレー・シックスにも共通する、不思議な魅力を備えているのだった。

協力:国際ランドクラブ・オーナーズクラブ、オースチン3リッター・オーナーズクラブ

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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