メルセデス・ベンツEQB 詳細データテスト 成熟の走り 航続距離は不足 7座不要なら必然性は低い

公開 : 2022.05.28 20:25  更新 : 2022.06.21 04:50

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

EQBはミディアムサイズの7座SUVだが、その乗り味やハンドリングはもっと大きなクルマのようだ。サスペンションレートはミディアムソフトで、控えめだが明らかに長距離走行に向いた動き方をする。操縦系はほどほどのペースと手応えで、クルージング時にはリラックスした空気感と安定感を生んでいる。

取り回しも悪くない。ステアリング入力に対して、取り立てて俊敏でレスポンスがいいわけではないが、ステアリングのリニアさは良好で、ハンドリングには一貫性がある。そのため、路上での位置決めが楽だ。また、たいていの駐車場なら、車体のサイズを気にせず容易に停めることができるが、これには短いオーバーハングが寄与するところが小さくない。

EQB 300の挙動はゆったりしたもので、開けた道を流すのに向いている。急かされない日常使い的なドライビングは、テスラ・モデルYよりも得意だ。
EQB 300の挙動はゆったりしたもので、開けた道を流すのに向いている。急かされない日常使い的なドライビングは、テスラモデルYよりも得意だ。    MAX EDLESTON

いっぽうで、ボディコントロールとハンドリングの精確さには、速度域の高いコーナーでも意図した走行ラインをきっちりなぞれるものがある。速度が上がるとロールやバネ上の動きが出るものの、乗員の快適性を犠牲にするほどではなく、グリップレベルや全体的なスタビリティに悪影響を及ぼすようなこともない。

グリップ限界まで攻めるとわかるのは、横荷重が増すほどにロールは大きくなり続けるが、手に負えなくなることはないということ。そしてハンドリングは、常時作動しているスタビリティコントロールが徐々に駆動力を絞りはじめるまで、正しいバランスが残るということだ。タイヤは経済性重視の銘柄だが、グリップは十分に力強い。

コーナーの脱出では、フロントが引っ張るより、ほぼリアのトルクで押し出されているはずだが、それをはっきりと感じさせることはない。ハンドリングが感じさせる熱さは、たとえあったとしてもわずかだ。

それでもEQBはたいていの場合、狙うポイントを通すことができる。そして、おおむねステアリング操作のペースに見合った動きの速さを感じられる。非の打ちどころはなく、予想しやすくて楽しい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事