才色兼備なイタ車 ランチア・ベータ HPE/クーペ/スパイダー 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2022.06.12 07:06  更新 : 2022.06.20 09:36

フィアットの協力で生まれたFFモデル、ベータ。価値を高めるイタリアン・クラシックを、英国編集部がご紹介します。

ランチアが改良したツインカム4気筒

ランチアの技術者が改良を施したフィアット由来のツインカム4気筒は、素晴らしいユニットだった。排気量は1.3Lから2.0Lまで幅広いが、どれも耐久性は高く、運転を楽しいものにしてくれる。

レイアウトはモダンで、エンジンが5速MTと一緒に横向きで搭載された前輪駆動。サスペンションは前後ともにマクファーソンストラット式の独立懸架。ディスクブレーキも採用されていた。

ランチア・ベータ・クーペ(1974〜1984年/英国仕様)
ランチア・ベータ・クーペ(1974〜1984年/英国仕様)

登場は初期のベルリーナが1972年だから、すでに50年が経過している。年式を考えれば、感心する内容といえる。

調子の良いベータを運転すれば、適度にタイトで生き生きとした印象を受けるはず。英国の場合、1.6Lと2.0Lエンジンが一般的。排気量の小さい方が小気味よく吹け上がり、大きい方がトルクフルという特徴がある。

燃料インジェクションやスーパーチャージャー版は、特に威勢が良い。1.3Lは高回転域まで回す必要があるものの、そのぶん使い切る楽しさがある。

運転席からの視界に優れ、ツインカムエンジンのサウンドも聴き応えたっぷり。ドライビング体験の充足感は、ほかのモデルでは得難いものといえる。前後ともにブレーキはディスクだから、安心して加速もできる。

エンジンは堅牢 ブレーキや車体の腐食に注

長期間乗らないでいたり、整備されていないような例は注意が必要。特にタイミングベルト交換を怠ると、致命的な不具合に陥る。アルミ製ヘッドの腐食に伴う、ヘッドガスケットからの吹けやオイル漏れがないかもチェックポイントの1つ。

ラジエターの詰まりやクーラント漏れ、ウオーターポンプの不調も要注意。エンジン内部が摩耗すると、回転が安定しなくなったり、ノッキングや振動につながる。スーパーチャージャーも、消耗するとノイズが大きくなる。

ランチア・ベータ・クーペ(1974〜1984年/英国仕様)
ランチア・ベータ・クーペ(1974〜1984年/英国仕様)

キャブレターの場合は、適切にメンテナンスしていれば問題は起きにくいものの、スピンドルの摩耗に気をつけたい。ボッシュ社製の燃料インジェクションは信頼性が高い。

5速マニュアルのトランスミッションは堅牢だが、フルード不足で不調を招く。シフトリンケージの摩耗は珍しくなく、フィーリングを悪化させる。交換キットを安価に入手可能で、改善はできる。

AP社製のオートマティックもオプションで選べたが、とても珍しい。近年は部品の入手も難しいようだ。ディスクブレーキは、乗らないことが原因で腐食し固着してしまう。乾燥したガレージで保管されていない限り、すべて正常に動くか確かめたい。

ボディは全体的に錆びやすいが、端正なスタイリングとコンパクトなサイズがベータを際立たせた。現存する多くは大切に乗られ、惜しみなく手入れされてきた例が多い。自身のものとする場合は、充分な確認が不可欠だけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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