才色兼備なイタ車 ランチア・ベータ HPE/クーペ/スパイダー 英国版クラシック・ガイド 後編
公開 : 2022.06.12 07:06 更新 : 2022.06.20 09:36
購入時に気をつけたいポイント
ボディとシャシー
基本的に錆びやすい。フロントのサブフレームやリアのクロスメンバー周辺、リアのストラット・マウント、フロントのバルクヘッドやAピラーの付け根、フロアパン、サイドシル、ボンネットのエッジ、フロントガラス周りなどはその1例。
ほかにもサンルーフの開口部やルーフの両端のエッジ、ドア、リアフェンダーやリアハッチ、燃料タンクなども錆びがち。可能な限り、各部を観察しておきたい。
スパイダーのテールライトは入手不可能。S2のヘッドライトも出てこないようだ。
エンジン
メンテナンスの履歴を確かめる。タイミングベルトは、3年毎か5万8000km毎の交換が指定されている。エンジンオイル漏れ、ヘッドガスケットの不調、オーバーヒートの痕跡がないかもチェックポイント。
スーパーチャージャー付きのエンジンは、自然吸気より負荷が高い。エンジンオイルが燃焼して生じる、臭い白煙が排気ガスに混ざっていないか確かめる。ベアリングが摩耗すると、擦れるようなノイズが出る。電動ファンが動かない場合もあるようだ。
サスペンションとブレーキ
ショックアブソーバーからのオイル漏れや、劣化し潰れたブッシュがないか確かめる。リア・サスペンションは軽量設計で機能的。腐食状態を確認する。
ブレーキディスクも錆びやすい。キャリパーは、長期間乗らないでいると固着しがち。ハンドブレーキの調子にも注意したい。
インテリア
欠損している部品がないか確かめる。スイッチ類やステアリングコラムのレバーなどは、オリジナル品以外に交換されていることも。電装系は、すべての機能が動作するか確認する。メーター類は、すべて正常に動いている事自体が珍しい。
シートは合皮やクロスで仕立てられている。摩耗し裂けていないか確かめる。VXには、レカロシートが装備されていた。ベータボーイズ(BetaBoyz)というサイトでは、レストア用の部品を入手できる。
ランチア・ベータ HPE/クーペ/スパイダーのまとめ
誕生から50年近くが経過したベータ。HPEは特に積極的に乗られることが多く、結果として残存台数は少ない。スパイダーやクーペは、丁寧に維持されてきた傾向が高いようだ。価値としては、人気の高いクーペのVXが1番。
もしガレージに1台とお考えなら、時間を掛けて、理想的な整備記録を持つ状態の良いベータを探したい。価格は上昇傾向。安くレストアすることが難しいクルマでもある。
良いトコロ
スタイリッシュで乗りやすく、ドライビング体験もモダン。熱心なオーナーたちによるオーナズクラブや専門ショップが英国には存在する。相談すれば、丁寧にサポートしてくれるはず。
良くないトコロ
ボディなどが錆びやすく、パネルやトリム類の入手が難しい。レストア費用もかさみがち。専門家へレストアを依頼するような場合を除いて、状態の悪いベータには手を出さない方が良いだろう。
ランチア・ベータ HPE/クーペ/スパイダー(1974〜1984年/英国仕様)のスペック
英国価格:7046ポンド(HPE 2000/1979年時)
生産台数:11万1801台(クーペ)/7万1261台(HPE)/9400台(スパイダー)
全長:3990-4290mm
全幅:1630-1690mm
全高:1270-1310mm
最高速度:162-199km/h
0-97km/h加速:8.9〜12.3秒
燃費:7.8-11.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:992-1195kg
パワートレイン:直列4気筒1297/1301/1366/1585/1592/1756/1995cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:86ps/5800rpm-134ps/5500rpm
最大トルク:10.9kg-m/5800rpm-20.9kg-m/5500rpm
ギアボックス:5速マニュアル/3速オートマティック