世界市場の気づかない価値 ジャガーXJ220を振り返る ゴージャスなスーパーカー 前編
公開 : 2022.06.04 09:45
最新の911 GT3に勝る中間加速
当初、エンジンはV型12気筒だと告知されていたが、最終的に3.5LのV型6気筒ツインターボへ変更され、注文していた投資家から批判を集めた。四輪駆動も見送られ、後輪駆動となった。
一方、1990年代に入り景気は急速に悪化。エンジンの変更は注文をキャンセルする格好の理由になった。このV6ツインターボは、トム・ウォーキンショー・レーシングのグループCカー、XJR-10やXJR-11で不満のない成績を納めていたのだが。
コンセプトカーから6気筒を失っても、XJ220は速かった。0-97km/h加速3.6秒は、今でも高性能モデルとして充分に通用する。
しかも後輪駆動で、トラクション・コントロールやローンチ・コントロールといった、電子アシストは一切なし。当時最先端のタイヤと、マニュアル・トランスミッションを操るドライバーによって成し遂げられた数字だった。
新しい992型のポルシェ911 GT3と、加速性能を比べてみよう。リアエンジンというトラクションと、ステアリングホイールに付いたシフトパドルの効果が発揮され、静止状態から225km/hくらいまでの加速は、911 GT3の方が速い。
しかし、変速なしでの中間加速を比べると逆転する。パワーをタイヤが受け止められるようになる、100km/h前後からはXJ220が有利。97km/hから128km/hと、209km/hから241km/hまでの加速は、0.5秒も短くこなせる。
英国の自動車試験場、ミルブルックの限られたストレートでも、273km/h(時速170マイル)までの加速テストを実施できた最初の量産車だった。当時、実際にステアリングホイールを握った筆者には、忘れられない記憶だ。
この続きは後編にて。