リアル・モータースポーツ ケータハム・セブン 420カップへ試乗 究極の公道セブン 後編

公開 : 2022.06.07 08:26

サーキット専用、UKレーサーの公道版といえる420カップ。熱いドライバーに応える能力を、英国編集部は評価します。

惹き込まれるダイレクトな変速フィール

ケータハム・セブン 420カップに備わる、サテン風のカーボンファイバー製ダッシュボードは、620Rと同じもの。メーター類は420カップの専用品だという。ブランドの水準では洗練されたインテリアとはいえ、まったくもってスパルタンだ。

サーキットを攻めるのに必要な装備といえる、6点ハーネスを締めるには少々手間取る。いったん準備が整えば、案外と快適なことに気付く。

ケータハム・セブン 420カップ(英国仕様)
ケータハム・セブン 420カップ(英国仕様)

エンジンのスタートボタンを押すと、トラックデイ仕様のマフラーから、いかにもセブンらしいエグゾーストノートが放たれる。4気筒エンジンの息づかいも荒々しい。

手応えのあるシーケンシャルMTのシフトレバーを手前に引き、1速を選択。発進は思いの外簡単だった。しっかり圧着されるレーシング・クラッチを装備しているというが、車重が軽いためか実感はあまりない。

試乗コースはグレートブリテン島の東、スネッタートン・サーキット。エンジンを8000rpm近くまで引っ張り、シフトレバーを弾いてシフトアップ。思わず夢中にしてくれる、ダイレクトな反応が痛快だ。

このサデブ社製シーケンシャルが、公道でどれだけ扱いやすいのかは不明。少なくともサーキットでは、素晴らしいトランスミッションであることは間違いない。すぐに次のギアを求めたくなる。

スネッタートンの舗装も完璧。減衰力を最大に引き上げても、まったく不自然な挙動は生じない。

セブンと一体になりサーキットを飛び回る

設定が決まった状態の420カップは、期待通りの輝きを放つ。鋭く安定してコーナーへ飛び込め、アンダーステアへ転じる前に、必要に応じてカウンターステアを当てられる。

プッシングアンダーは、進入時に軽くブレーキングし、回頭するきっかけを与えることで防げる。サスペンションがボディをフラットに保ち、シフトダウンも簡単にこなせ、シャシーとのやり取りは難しくない。

ケータハム・セブン 420カップ(英国仕様)
ケータハム・セブン 420カップ(英国仕様)

フロントがステアリングホイールの入力へ正確に反応し、同時にアクセルペダルの加減で積極的に向きも変えていける。不安感もない。

周回を重ねるほど、コーナーへの侵入速度が速まる。アクセルオンのポイントも、徐々に手前へずれていく。クルマとの信頼感が増していく証といえる。まるでケータハムと1つになって、サーキットを飛び回っているようだ。

フロントエンジン・リアドライブというバランスも素晴らしい。グリップからスリップへの移行は滑らかで自然。リカバリーもしやすい。

自然吸気4気筒エンジンのパワーデリバリーは線形的。ステアリングラックは、鮮明で正確にフロントタイヤの状況を伝えてくれる。ダンパーの巧みな質感も非の打ち所がない。

すべてが融合し、他に類のない直感的なドライビング体験を構成している。ミドシップのアリエル・アトムとも、まったく別物。見事なクルマとの一体感だ。

一方でダンパーを1番ソフト側へ切り替えると、ボディがしなやかに動くこともわかる。明らかに、姿勢制御の振り幅は広いといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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