市場から姿を消せば悲劇 トヨタGR86へ英国試乗 稀有なドライビングマシン 前編
公開 : 2022.06.09 08:25
ブレーキとパワステは先代から続投
豊かなパワーを得るには高い回転数まで引っ張る必要があるが、そのかわり車重も軽い。先代から37kg増えたとはいえ、1276kgしかない。トヨタによると、同じスペックで揃えることができれば、実質は10kg減量したそうだ。
2代目への進化で、おそらく一番大きい違いがこのエンジンだといえる。トランスミッションは、マニュアルもオートマティックもギア比が変更され、タイヤもハイグリップなものになったが、それ以外の変化の幅は比較的小さい。
ディスクブレーキと電動油圧パワーステアリングは、先代からのキャリーオーバー。トルセン式のLSDは、冷却用フィンが追加されたが、内容自体は同じだ。
車内空間は相変わらずタイト。先代譲りの優れた視界と、サポート性の良い見慣れたシートが与えられている。着座位置は5mm下げられた。ドライビングポジションは完璧で、こっそりストリートレースを興じたくなってしまう。
インテリアは、ダッシュボードがソフト加工され、全体の仕立ても向上しているものの、まだコスト重視のプラスティックが支配的。質感でいえば、マツダMX-5(ロードスター)の方が上だ。
それでも、強く不満を抱くことはないはず。ダッシュボード中央にはタッチモニターが据えられ、アンドロイド・オートとアップル・カープレイに対応。後付け感があるとはいえ、アルカンターラも一部に施されている。
剛性が大幅に高められたシャシー
シャシーの基本設計は10年前となるが、ねじり剛性は大幅に高められている。ボンネットにも補強材が追加されている。締結するボルト類も強化され、フロント側の横方向の剛性は60%も向上した。
フロント・サスペンションとサブフレームの間には、ブレースを装着。フロントタイヤへ掛かる負荷を巧みに分散し、ステアリングの一貫性を高める効果があるという。
リア側では、サスペンション・マウント部分を強化。後部座席の背もたれ部分を上下に補強する、フルリングとトヨタが呼ぶブレース構造も取り入れることで、こちらも剛性を50%高めている。
エンジンの最大トルクが増えたため、リアのアンチロールバーは強化されたサブフレームへ直接固定。ロール剛性も増した。
タイヤは、先代からシリアス方向に振られた。ミシュラン・プライマシーではなく、グリップ力の高いパイロットスポーツ4が組まれる。ただし、幅は215と細いまま。過度にグリップ優先の設定ではない証拠だ。
予習はこのくらいにして、今回の試乗場所はスペイン南部。モンテブランコ・サーキットと、周辺の一般道というメニューが用意されていた。
どちらも路面状態が良く、英国や日本のように、ツギハギやワダチの多い環境ではどんな乗り心地なのか把握が難しかった。それでも、根底にある特性は充分に理解することができた。
2代目でも、ラップタイムを削るような尖った性格にはなっていない。本来の良さが失われることはなかった。
この続きは後編にて。