PHEVにも容赦ない「攻撃」 EU、新たな排ガス規制を検討 消費者負担増の可能性も
公開 : 2022.06.01 06:25
EUは新たな排ガス規制「EU6e」を検討しています。導入されればプラグイン・ハイブリッド車が淘汰される可能性があります。
排ガスのCO2測定方法が厳しくなるかも
欧州連合(EU)は、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)に新たなCO2排出規制を課し、その販売に甚大な影響を与え、EVの普及を加速させようとしている。
すべてのPHEVは、新規制「EU6e」のもと、2027年までに公式排出量(1km走行あたりのCO2グラム数)が2倍以上に増加する可能性がある。
これは、エンジンを起動したICEモードと、電気のみで走るEVモードでのCO2排出量をミックスして公式の複合数値とする際に用いる「UF(実用係数)」を、劇的に増加させるからである。AUTOCARの調べによると、UFは2025年に800程度に設定され、2027年には5倍の4000以上に増加する見込みだ。
その結果、現在50g/kmのPHEVが2027年には125g/km程度になり、税金や排ガス課徴金の増加により、所有コストに大きな影響を与えることが予想される。
こうしたCO2数値の上昇から、自動車メーカーも企業平均排出量の再計算の必要に迫られるだろう。欧州では現在、ディーゼル車の代替としてPHEVに頼っているケースが多いためだ。
PHEVは、2035年のICE廃止に向けた「通過点」としても重宝されており、販売台数や収益を支える重要な製品となっている。
しかし、EUによる罰金回避のため、メーカーは今まで以上に迅速にEVを展開する必要がある。ICE車1台の販売に対して、おそらく2~3台のEVを販売することになるだろう。半導体やバッテリーセルの供給に悩む自動車業界にとって、難しい挑戦となることは間違いない。
なぜ環境保護団体はPHEVを嫌うのか
業界団体やメーカー各社はこの話題に対し非常に敏感になっており、ACEA(欧州の全自動車メーカーを代表)とSMMT(英国の業界を代表)の2大自動車業界団体は、いずれもAUTOCARにコメントを出さなかった。
このEU6e計画は、消費者と自動車メーカー双方にとって、PHEVの経済的メリットを損なうことは間違いない。企業平均CO2排出量の規制値が42g/kmに強化されるのと同時に、PHEVが重しとなって、平均排出量が130g/kmとなってしまうのだ。
PHEVのCO2排出量を減らすには、バッテリーを大きくして電気のみの走行距離を延ばし、エンジンを小さくして燃料消費量を減らすなど、困難かつ高価な技術的解決策が必要になるだろう。ある試算では、必要最小限のバッテリーサイズは30~40kWhと、純EV並みのサイズが求められている。
また、EUがPHEVに敵対的な環境を作っている中、メーカーは何百億円もの開発費の投入を検討しければならない。特に、EUの平均排出量規制が0g/kmに達すると予想される2030年以降は、製品寿命が限られるためだ。
その結果、UFの数値の合意を巡り、環境ロビイスト、自動車メーカー、EU当局者の間で論争が巻き起こっている。2030年に平均排出量を42g/kmに押し下げる「EU7」規制が物議を醸していることを考えると、この議論はなおさら重要だ。
EUの法律に強い影響力を持つNGO団体Transport and Environment(T&E)のような環境ロビイストは、PHEVに反対するレポートを複数発表している。今年3月には、PHEV販売のために昨年の欧州でのEV販売台数が最大60万台減少したとする報告書も出ている。
「PHEVが問題になっている今、UFの実装を遅らせることはできない。また、UFの変更には技術的な変更が必要ないため、2025年は現実的なスケジュールである。UFの更新は、CO2排出量を算出するための誤った計算を修正するだけである」というのがT&Eの主張だ。