619psと103.3kg-mのフラッグシップ BMW iX M60へ試乗 一味違うMのSUV

公開 : 2022.06.10 08:25

好ましい後輪駆動らしいフィーリング

もちろんフラッグシップとして、積極的にも走れる。ドライブモードをスポーツに切り替えると、隠された牙が顕になる。S54直列6気筒エンジンでは叶えられない勢いで、凄まじい加速力が放たれる。ハンス・ジマー氏のサウンドも、迫力を増す。

印象的な加速力を生み出す駆動用モーターだが、BMWらしい特徴といえるのが、高速域になっても勢いが衰えにくいこと。現在の一般的な純EVとは異なる特性だ。

BMW iX M60(欧州仕様)
BMW iX M60(欧州仕様)

アウトバーンでアクセルペダルを倒し続けると、249km/hのリミッターへ簡単に当たってしまった。もしモーターの回転数制限が解かれれば、300km/h超えも難しくないように思う。

今回はワインディングを攻める機会はなかったものの、能力は充分に高そうだ。i4 M50並みに、機敏にクリアすることはないとしても。

ポルシェカイエンの方が、シャシーバランスや操縦性、俊敏性では上にある。しかし、iX M60の後輪駆動らしいフィーリングは好ましい。ボディロールの発生も抑えられ、挙動は一貫しており、不安感はまったくない。

ただし、引き締められた足まわりが、傷んだ英国の一般道で良くない影響を生むことも想像できる。特に日常的な速度域で。改めて実際に確かめてみたい。

洗練され実用的で、安楽に速く走れる

BMW iX M60は、その動力性能の数字ほど攻撃的なSUVではない。引き締められたシャシーによって、目的地までより速く安楽に移動することができる、電動のラグジュアリーSUVだ。

ステアリングホイールの重み付けは軽すぎず、姿勢制御も抑制が効いている。速めのペースで長時間運転しても、思いの外疲れにくい。コンフォート・モードを選べば、上質な空間でゆったりと過ごすこともできる。

BMW iX M60(欧州仕様)
BMW iX M60(欧州仕様)

一方でiX M60には、内燃エンジンを載せる高性能SUVに匹敵するような、ある種の魅力が足りないようにも感じる。価格に縛られず、速く機敏で大きめのSUVをお探しなら、まだBMWならX5を、ポルシェならカイエンを検討しても良いだろう。

洗練され実用的で、安楽に速く走れる純EV SUVをお考えなら、確かにiXは有力な候補になる。ただし、xドライブ50 Mスポーツでも充分満足できるかもしれない。

BMW iX M60(欧州仕様)のスペック

英国価格:11万6905ポンド(約1870万円)
全長:4953mm
全幅:1967mm
全高:1695mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:3.8秒
航続距離:500-561km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2584kg
パワートレイン:ツインAC同期モーター
バッテリー:105.2kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:619ps
最大トルク:103.3kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事