個性で魅了する上級サルーン シトロエンC6 英国版中古車ガイド 複雑なハイドロにご注意

公開 : 2022.06.18 08:25

いつの時代も独特の個性でアピールしてくるシトロエン。ハイドロ搭載の上級サルーンを、英国編集部がご紹介します。

コレクターズ・モデル化しつつあるC6

少し前までのシトロエンは、今以上に素晴らしかった。ステランティス・グループの一員として、近年は順調に成長しているとしても。

革新的で急進的で、スタイリッシュ。戦後間もない頃のシトロエンの多くは特に、心に訴えてくるような独特の魅力が備わっていた。ただし、最新のモデルを否定するつもりはまったくない。

シトロエンC6(2005〜2012年/英国仕様)
シトロエンC6(2005〜2012年/英国仕様)

何しろ、普段使いのクルマとして乗り回すには、ある程度のブランドへの理解と知識が必要だった。流行りのSUVを残価設定プランで乗るのと同じ気軽さで、維持できるわけではなかった。

実際、あまり良くないイメージもつきまとっていた。機械的な複雑さと、それに伴う不確かな信頼性、低い中古車価格などが、その原因といえた。だからこそ、ひと昔前にシトロエンC6を新車で買った勇気あるファンを讃えたい。

英国では2005年から2012年にかけて販売されたC6だったが、台数は1000台にも満たない。現役時代から珍しい存在といえ、最近はコレクターズ・モデル化しつつある。

そんなシトロエンC6のオーナーになれば、セルフレベリング機能付きのハイドロニューマチック・サスペンションの滑らかさを堪能できる。ハイドラクティブ3+と呼ばれる当時の最新版で、3モードが選択できた。

前後左右へ緩やかにボディを揺らしながら、柔らかい枕のような乗り心地で移動できる。レザーがふんだんに用いられたインテリアは、現代芸術のようにエレガント。ドイツ勢とは一線を画す、独自性が貫かれている。

ボディを眺めているだけで喜びに浸れる

さらに、大胆にカーブを描くスタイリングは、往年の素晴らしいシトロエンを彷彿とするもの。駐車場に停めてボディを眺めているだけで、C6を買った、という喜びに浸っていられる。

長く低く、疑いようなく美しい。目を細めれば、DSやCXのシルエットと重なって見える。中央がくびれたリアウインドウは、見が目が斬新なだけではない。雨天時の高速走行でも視界を保つ、機能性も備わっている。

シトロエンC6(2005〜2012年/英国仕様)
シトロエンC6(2005〜2012年/英国仕様)

2005年の発表時にC6へ搭載されたエンジンは、3.0L V6ガソリンターボと、2.7L V6のディーゼルターボ。最高出力はそれぞれ218psと211psを発揮した。トランスミッションは、6速オートマティックが標準だった。

2007年になると、173psを発揮する2.2L 4気筒ディーゼル・ツインターボが登場。これには6速MTが組み合された。2009年には、240psの3.0L V6ディーゼルターボが2.7Lユニットと入れ替わり、選べるようになっている。

英国の場合、流通しているC6の殆どはディーゼルエンジンで、印象は滑らかに回転するものの実務的。日本とは異なり、ガソリンエンジン版を探すことは難しい。

走りは、スポーティという言葉とは無縁。ゆったりとした姿勢制御と身のこなしこそ、このクルマの信条。引き締まった質感を求めるなら、クラシックなシトロエンは最初から考えない方が良いだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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