海外で30万km超の中古プリウスが増えているワケ 掘り出し物の過走行車を見つける方法とは

公開 : 2022.06.02 18:05

過走行の中古車は果たしてお買い得と言えるのか。購入後に後悔しないよう、中古車選びの失敗しないコツや海外の事例を紹介します。

過走行のプリウスを買うということ

きっかけは、走行距離62万7000kmのトヨタ・プリウス(2011年式の60REG 1.8 VVT-h T Spirit)だった。

英国に住む筆者の友人がクラシファイド広告で見つけてきて、3150ポンド(約50万円)で、12か月の故障補償付きなら一見の価値あり、と言ってきたのだ。

過走行のプリウスが英国の中古車市場で増え始めている。果たして「お買い得」なのだろうか。
過走行のプリウスが英国の中古車市場で増え始めている。果たして「お買い得」なのだろうか。

個人的には、友人はディーラーが昔から使っている手口に惹かれたのだろうと思う。「First to see will buy」、つまり「最初に見た人が買ってしまうかも」という宣伝の常套句だ。それでも、筆者はディーラーに電話をかけることにした。結果、宣伝文句の通りになったというわけだ。

過走行のプリウスについて考えさせられた。その数は実に多い。もちろん、フォード・モンデオやフォルクスワーゲンパサートにも、走行距離の長い中古車がたくさんある。しかし、小さな広告に出続けるのはプリウスだ。その主な理由は、プライベートハイヤー(PHV)のドライバーやオペレーターの間で人気があるためだ。

友人の見つけたプリウスは一晩で売れたわけだが、同等の中古車を見つけるのは簡単だった。

不思議に思われるかもしれないが、25万~30万km程度のプリウスよりも、このような過走行のプリウスの方が「信用」できるのである。筆者はディーラーを訪ね、他のクルマはないのか、走行距離が長いとプリウスはどうなるのか、などを確かめてみた。

老朽化にメーター改ざん…… メリットはある?

筆者は以前、クルマの走行距離に関する特集で、29万kmを走ったと主張する2010年式プリウスを紹介したことがある。しかし、MOT(英国の車検)の記録をチェックし、さらに走行距離の専門家に相談したところ、実際には64万kmを走行しているとのことだった。

過走行のプリウスについて、いや、どんな過走行車についても言えることは、それを販売するディーラーが営業時間を守ったり、スマートな店舗を構えたり、歓迎のコーヒーを淹れてくれたり、といったサービスはあまり期待しないほうがいいということだ。過走行車の利益からは、そんな余裕は生まれにくい(あくまで英国の話)。

社用車やレンタカーなどで使われていた場合、走行距離は伸びるが、比較的しっかりメンテナンスされていることが多い。
社用車やレンタカーなどで使われていた場合、走行距離は伸びるが、比較的しっかりメンテナンスされていることが多い。

筆者は午前10時ちょうどにディーラーのプレハブ店舗に着いて、30分ほど待ったが、一向に人が来る気配はなかった。

暇を持て余し、展示されているプリウスを見て回ることにした。2004年式の1.5T Spritで27万km、3995ポンド(約64万円)とある。車検の記録を見ると、2011年から2012年の間に、38万3000kmから17万3800kmに「調整」されていることがわかった。つまり、実際には48万km走ったことになる。

クルマをひと目見て納得した。淡いベロアの内装は黒く汚れ、ステアリングはテカテカに光り、コラムカバーには皮膚細胞やさまざまなゴミが付着している。プラスチック製のカウルカバーは脆くひび割れ、アルミホイールは腐食が進んでいた。

このディーラーはもう十分見たので、広告に載っていた別のプリウスを探しに出る。お目当ては2014年式の1.8 T3で、走行距離は37万km。プライベートハイヤーのライセンスがまだ1年残っている9000ポンド(約146万円)の個体は珍しいものだったが、悲しいかな、そのクルマもディーラーもどこにも見当たらなかった。

気を取り直して、次。ワンオーナーの2011年式1.8 T4、走行距離26万2000km、価格は6795ポンド(約110万円)である。今回は、ディーラーが立ち会ってくれたので試乗することができた。

走行距離が伸びてもクルマが良くなるわけではないが、試乗してわかったのは、それをうまく誤魔化しているものもあるということだ。26万2000kmのプリウスはガタガタと音を立てながら走っていたが、ブレーキの効きは強く、エンジンは単調だが適度に回り、CVTも文句を言わずスルスルと動いていた。

シートも意外に快適で、汚れやシワなどはそれほどひどくない。しかし、初期のプリウスはプラスチッキーで味気なく、家族よりも運賃を運ぶのに向いていることを思い知らされた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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