車輪の付いた攻撃ヘリ? イスラエル製の次世代軽装甲車が凄かった プラサン・ワイルダー

公開 : 2022.06.14 18:05

イスラエルのプラサン社は、新型の軽装甲車「ワイルダー」を公開。ヘリのような座席配置や自立型電動トレーラーとの連結など、斬新な設計思想が盛り込まれています。英国陸軍への採用の可能性も。

軽装甲車の原点に立ち返った小型・軽量設計

イスラエルの自動車メーカーであるプラサンは、攻撃ヘリコプターのようなキャビンを備えた画期的な軽装甲車「ワイルダー(Wilder)」を公開した。

新型ワイルダーは、ジープラングラーに近い比較的コンパクトなボディに、ピックアップトラックのような荷台を備えており、最大4人の兵士を収容できる。装甲化された軍用車両が大型化しつつある昨今の傾向からの脱却を図っている。

プラサン・ワイルダー
プラサン・ワイルダー    プラサン

設計を担当したのは英国人のニール・カーン。オフロードバギーからヒントを得て、モノコックの「キット化された外殻」ボディに取り付けられたチューブ状サブフレームに、エンジンとトランスミッションをミドシップ搭載。第2のサブフレームがフロントサスペンションを支えている。

カーンはワイルダーについて、「車輪のついたアパッチ攻撃ヘリコプターのようなものです」と述べている。

攻撃ヘリのような座席配置 2.8Lディーゼルで最高出力161ps

重要なポイントは、ワイルダーと連結できる電気駆動の2輪トレーラー「アテム(ATeMM、全地形電動ミッションモジュール)」の存在だ。アテムは遠隔操作が可能なモジュールで、別のアテムと連結して4輪駆動の無人車両とすることもできる。将来的にレベル4の自動運転機能を実装する予定だ。

「戦場での自動運転は、民間の自動運転とは大きく異なります。車両はどこにでも行くことができますが、道路の白線のようなインフラがないのです」とカーンは話す。

プラサン・ワイルダーの各座席とエンジンの位置を示したCADモデル
プラサン・ワイルダーの各座席とエンジンの位置を示したCADモデル    プラサン

ワイルダーは4.5トンと比較的軽量かつコンパクトなため、チヌーク輸送ヘリコプターへの積載も可能で、4人の兵士とともに戦闘に投入できる(ライフル弾への耐性を持つ)。

最高出力161psの2.8LターボディーゼルエンジンとZF製8速ATを搭載し、4輪を駆動する。最高時速は120km/hに制限されている。

電気駆動のアテムと連結すると、従来のハイブリッド車のように「パワー」、「エコ」、「リジェネレーション(バッテリー充電)」の3つのモードで走行できる。

カーンによると、「機械学習によってルートを把握し、自動的にモードを切り替えることで、最高のミッションパフォーマンスを実現する」という。

革新的な2輪トレーラー 将来的には無人の自律走行も

プラサンが開発した2輪トレーラー、アテム(ATeMM)は、47kWhのバッテリーと最高出力34ps、最大トルク102kg-mの電気モーターを搭載。ワイルダーを前進または後進させることができる。また、2台目のアテムと連結すれば、4輪駆動の自律型兵器プラットフォームとして静かに稼働することができる。

プラサンは、英国陸軍の「テシウス計画(Project Thesius)」に参加する企業の1つであるため、ワイルダーが同軍に採用される可能性もある。テシウス計画とは、前線の兵士への物資輸送を無人化することを目指したプロジェクトで、弾薬や食料、燃料などをドローンや無人車両で運搬することで、人員損失のリスクを削減しようとしている。

2台のアテムと連結したプラサン・ワイルダー。画像のアテムには砲塔が装備されている。
2台のアテムと連結したプラサン・ワイルダー。画像のアテムには砲塔が装備されている。    プラサン

英国に拠点を置く自動運転開発会社ホリバMIRAは、プラサンのアテムに似た6輪の無人プラットフォーム「ヴァイキング」を英国陸軍に試験供給する契約を獲得している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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