払い下げパトカーがお買い得? 海外で中古の警察車両が売れているワケ

公開 : 2022.06.14 19:25

BMWから三菱まで 選択肢は意外と豊富

エクス・ポリスカー・センターには常時約30台の中古パトカーが並んでおり、主にBMW X5、三菱ショーグン(パジェロの海外名称)、スコダ・オクタヴィア、プジョー308ヴォグゾールオペルの英国ブランド)・アストラなどがある。すべてディーゼル車で、新車から5年以下のものが多い。

取材班が訪れたときの価格は、2013年式ヴォグゾール・アストラ1.7 CDTi Tech Line Sports Tourer(走行距離24万km)の3295ポンド(約54万円)から、2019年式BMW X5 30d SE Auto xDrive(同12万km)の2万9995ポンド(約490万円)までと幅がある。

英国で払い下げの警察車両を民間に販売する業者は6社しかいない。
英国で払い下げの警察車両を民間に販売する業者は6社しかいない。

中古車市場全般に言えることだが、中古パトカーの価格は上昇傾向にある。同時に、警察が新車の調達に問題を抱えているため、処分される中古車は少なくなっている。

幸いなことに、エクス・ポリスカー・センターの中古車は十分にきれいな状態のものばかりだ。しかし、もし綺麗なメタリックカラーの個体を探しているなら、パトカーは諦めたほうがいい。ほとんどの場合、回転灯などのライト類やアンテナを取り付ける「穴」が開いた状態で処分され、修理業者がそれを埋めて再塗装する。

そして当然ながら、これだけ使い込まれると、内装は少々くたびれた感じになる。ダッシュボードにも取り付け穴は残っている。タッチスクリーンはそのまま使えるが、通信装置をまるごと交換することもあるという。

メンテナンスは万全? 信頼できる整備履歴

しかし、警察による整備履歴に惹かれてパトカーを購入する人は少なくない。「警官の安全が第一です」とマレットは言う。

「ブレーキ、サスペンション、ステアリングはOEM部品で交換します。多くの軍隊がそうであるように、わたし達も独自のワークショップを持っています。メーカーによる整備間隔が3万kmの車両でも、実際には同じ期間に4回、わたし達によって整備されていることがよくあります」

警察による整備間隔は、メーカーの指定より頻繁に行われていることが多い。
警察による整備間隔は、メーカーの指定より頻繁に行われていることが多い。

エクス・ポリスカー・センターでは、時々、機動隊バスのような興味深いものを目にすることがある。ミサイルや割れたガラスから警官を守るための二重窓を備え、キャビンヒーター、収納ロッカー、多数の座席、さらには牢屋までついている。犬用のケージが取り付けられた三菱ショーグンもあった。

時折、機密書類を積んだままの車両が届くそうだ。フィニーの印象に残っているのは、アン王女に同行する運転手への指示が残されたレンジローバーだという。また、ある車両には、「蛇が乗っているので運転しないように」というメモが入っていた。幸い(不運?)にも蛇は発見されなかったそうだが、古いパトカーの運転席の下を掃除するときには、覚えておくといいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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