地中海沿いに1万3000km走破 モーリス・ミニ・マイナーMk1 貴重な初期の生存車 後編
公開 : 2022.07.02 07:06
新車時に英国編集部がグランドツアーへ連れ出したミニ。日本で余生を過ごし、英国でレストアされた1台をご紹介します。
BMCのチームが丁寧に分析し再構築
667 GFCのナンバーを付け、1万3000kmの実験的なグランドツアーを走破したモーリス・ミニ・マイナー Mk1。過酷な条件を考えて、スクラップにされても不思議ではなかった。
しかしミニの専門家、ニッピー・カーが調べた限り、ブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)のチームはクルマを丁寧に分析。再び組み直された可能性が高いという。
ボディシェルは、プレスされたのが1960年2月だと判明。実際、1959年の夏に製造された初期のボディとは各部の特徴が異なっていた。
雨水が内部に流れないようにするため、ドアロック上に小さな雨どいが追加されるなどの改良が施されていた。一方でルーフには、リベットで仮に固定された雨どいが付いていた。これは、量産後のクルマとは異なる仕様だった。
ボディシェルには、工場で刻印されるべき数字がなかった。通常の生産ラインを通過せず、手作業でリビルドされたことを示唆していた。一新された理由は、激しいストレスに晒されたグランドツアーが理由だと考えていい。
ほかのメカニズムは、リビルドして利用されているものも少なくない。スピードメーターを固定する白いカウリングから、マグネシム製のトランスミッションまで、最初期のミニである特徴も多く残っている。
ダッシュボードのスイッチ類や電装系、ヒーターボックスも、1959年の夏に作られたものだった。ホイールは塗装を1度剥がし、金属疲労などの状態が確認されたようだ。
現代的で活発に走ることへ驚く
フロントのサブフレームを確認すると、悪路に備えて追加されたアンダーガードを固定した穴が残っている。だが、アンダーガード自体は残っていない。
アルプス山脈のグロースグロックナー峠を超える時から、ミニ・マイナー Mk1はオーバーヒート気味だった。これは旅の後半まで悩まされた問題だったが、ヘッダータンクの圧力キャップの不具合が原因だった。
さらにBMCの技術者は、アンダーガードがエンジンルーム内の気流を妨げ、冷却効率を下げていたことも突き止めた。鋳造されたオイルサンプの強度を考えると不必要な装備だったと、AUTOCARでも結論づけている。
エンジンも調子は良くなかった。フランス経由で英国へ戻る途中、エグゾースト側のバルブが溶けてしまったらしい。エンジンブロックが降ろされ調べられると、ピストンの1つが大きく損傷していることも判明した。
これを受け、ゴール後にエンジンが交換されたことも納得できる。ボディシェルの構築から、最終的に走れるようになるまで、リビルドにはかなりの時間を要したことだろう。
英国で美しくレストアされたミニ・マイナー Mk1のキーをひねると、848ccという小さな4気筒エンジンが目覚める。グッドウッド・サーキットのアスファルトを加速し、マジウィック・コーナーへ侵入する。
筆者は生産後期のミニを運転したことはあったが、最初期のMk1は初めて。限られた馬力にも関わらず、とても現代的に、活発に走ることへ驚かずにはいられない。