地中海沿いに1万3000km走破 モーリス・ミニ・マイナーMk1 貴重な初期の生存車 後編
公開 : 2022.07.02 07:06
フィーリングはゴーカートのようにタイト
マジックワンド(魔法の杖)と呼ばれた、長いシフトレバーを素早く動かしシフトアップして、アクセルペダルを踏み込む。ミニ・マイナー Mk1はミツバチのようにビーンとエンジンノイズを響かせ、コーナーを次々にクリアしていく。
ステアリングは鋭くダイレクト。短いホイールベースと、小径なタイヤというバランスで、フィーリングはゴーカートのようにタイトだ。それでいて、れっきとしたクルマだという安定感も伴う。
ブラックとグレーのツートン・シートは、初期のミニ・マイナーならではの特長。シートと同じ柄のトリムが、1960年代のドアに続いている。
60km/hを少し上回るようなスピードでも、驚くほど威勢良く感じられる。写真撮影のためにカメラカーを追走した時も、筆者はコーナー内側の縁石へフロントタイヤをタッチさせながら、運転を楽しんでしまった。
グッドウッドとミニ・マイナー Mk1を堪能していると、ダッシュボード付近から煙が出てきた。何かが溶けるような匂いがし、慌ててペースを落とす。英国の貴重な自動車遺産の1台を燃やしてしまうなど、恐ろしくてできない。
しかし心配不要だった。組み立て直したばかりのエンジンブロックが熱くなり、ヘッドなどの隙間に塗られた余分なシーラントや、潤滑剤が焼けただけに過ぎなかったようだ。
ミニ・マイナー最初期の貴重な生存車
現代の高性能なスポーツカーのように、息を呑むほどのドラマチックさはない。しかし、オリジナル・ミニの最初期の例が備えていた、活発さを確認できてうれしい。オーバーヒート気味だったという、悩ましい特性の雰囲気も。
モーリス・ミニ・マイナー Mk1の貴重な生存車だということには、大きな価値がある。さらにこの667 GFCの場合は、地中海沿いにボディをボロボロにしながら1万3000kmを走った。その過去を想像すると、思い入れが強くならずにはいられない。
丁寧にBMCの技術者によって再生された後は、欧州から遠く離れた日本でひっそりと余生を送ってきた。英国に戻り、専門家によって見事なレストアを受けたMk1は、今後も多くの人の関心を集めることだろう。
協力:グッドウッド、1959ミニ・レジスター