EV補助金打ち切りは「最悪のタイミング」 突然の英政府発表に反響 販売への懸念も

公開 : 2022.06.15 18:05

業界からは否定的な意見も多数……

今回のPiCG廃止について、自動車メーカー、販売業者、業界団体はどのような反応を示しているのだろうか。各々の声明をまとめた。

キア(起亜自動車)

欧州で電動モデルの販売を伸ばしているキアは、英国政府の決定を前向きに受け入れる姿勢を示した。

PiCG廃止が近いことはある程度予想されていたが、突然の政府発表に対し、英国では驚きが広がっている。
PiCG廃止が近いことはある程度予想されていたが、突然の政府発表に対し、英国では驚きが広がっている。

「プラグインカー補助金は、2011年以来、英国民のEVへの移行を支援する素晴らしい政府インセンティブでした。キアにとって、この補助金は、電動化モデルの拡張と好調な販売を補完するものです。2022年には、当社の累計販売台数の約18%が完全なEVとなる見込みです」

「プラグインカー補助金は、EVへの移行における重要な一歩でしたが、今後は公共充電インフラが2030年と2035年のパワートレイン規制導入に間に合うかどうかに焦点を当てる必要があります」

「業界全体でのさらなる調整、規格の一貫性、戦略的な長期計画があれば、英国のドライバーはこの移行をより効率的に行うことができるでしょう。2035年までの厳しい暫定目標が提案されている中、キアは政府の政策実施を支援し、EV充電インフラ目標の導入を歓迎します」

ステラティスUKマネージングディレクター ポール・ウィルコックス氏

14ブランドを抱える大手自動車メーカーのステランティス。今回の決定にはやや否定的な反応を見せた。

「英国政府が本日(14日)、予告なしにプラグインカー補助金を停止したことを知り、残念に思っています」

「ステランティスでは、ゼロ・エミッションの未来にコミットしており、政府の期限である2035年よりずっと前に、完全EVの乗用車とバンを導入する『デア・フォワード2030』計画を掲げています」

「この野心的な脱炭素化には、お客様が電動モビリティに移行するのを支援するために強固な充電インフラを含むすべての条件が整備されることが必要です」

「本日の決定は、英国の多くの自動車ユーザーや企業が抱く、EVへの完全移行という目標を助けるものではありません」

英国自動車製造者販売者協会(SMMT)最高責任者マイク・ホーズ氏

英国を代表する業界団体SMMTは、政府決定を明確に非難した。

「プラグインカー補助金の廃止は、自動車ユーザーと、ネット・ゼロ目標に取り組む業界に対して誤ったメッセージを送るものです」

「我々は、政府による電動バンやタクシー、福祉車両の新規購入者への継続的な支援を歓迎します。しかし、英国は現在、欧州の主要市場の中で、EV購入者への購入インセンティブがゼロである唯一の市場でありながら、普及に向けた最も意欲的な計画を持っているのです」

「EVの販売はまだ回復しておらず、すべてのメーカーが現在の需要よりも非常に多くのEV販売を義務付けられようとしており(EUの排出量規制など)、この決定は最悪のタイミングです」

「目標を達成できる可能性があるとすれば、政府はこの浮いた補助金を利用して、充電ネットワークへの大規模な投資を急ピッチで、これまで発表されたものを超える規模で行わなければなりません」

王立自動車クラブ(RAC)政策責任者ニコラス・ライズ

SMMTと並ぶ業界団体RACも、決定には否定的だ。

「英国におけるEVの普及は素晴らしいものです。しかし、誰もがEVを利用できるようにするためには、価格を下げる必要があります。これを実現するためには、より多くのEVを走らせることが重要であり、政府がこのタイミングで補助金の打ち切りを選択したことに失望しています。価格が高すぎるままでは、多くの人をEVに移行させるという計画を阻むことになります」

全国フランチャイズ・ディーラー協会(NFDA)最高責任者スー・ロビンソン氏

「プラグインカー補助金の廃止は、間違いなく英国全土におけるEVの普及を著しく阻害し、自動車業界が脱炭素化に向けて取り組んできた進歩を頓挫させる可能性があります。非常に残念な決定です」

「この動きは、消費者に誤ったメッセージを送り、クリーンな交通手段への移行を求める裕福でない家庭を最終的に害することになるでしょう」

エレクトリックカー・スキームCEOトム・グルート氏

「ガソリン車やディーゼル車のドライバーから記録的な燃料税を徴収している中で、政府がネット・ゼロへの移行支援を縮小するのは残念です」

「2050年までに100%EVにするためには長い道のりがあり、英国のドライバーの切り替えを支援するために政府の支援が必要です」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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