マクラーレン 初のクロスオーバー、2030年頃の発売目指し開発中 全固体電池搭載の完全EVか
公開 : 2022.06.15 18:45
マクラーレンは同社初のクロスオーバーを開発中で、2020年代後半に発売する見込みです。急激な方針転換の理由とは。
同社初のクロスオーバー 10年以内に発売
マクラーレンは、新型のクロスオーバー車を開発中で、2020年代後半に発売される見込みである。これまでスーパーカーやハイパーカーしか作らないと宣言してきた同社の方針と相反するものだ。
この新型クロスオーバーは、ハイブリッドではなく完全EVとなる見込みで、内燃エンジンを搭載することはないだろう。今のところ派生モデルの計画は示されていないが、アストン マーティンDBXのように、いずれ複数の仕様を展開することになるだろう。
クロスオーバーとしては比較的車高の低い、コンパクトな四輪駆動車で、電気モーターを2~3基搭載すると考えられる。マクラーレンのブランドにふさわしい高性能モデルとなるだろう。
バッテリーのコストなどを考慮すると、価格は現行モデルを大きく上回り、6000万円近くに達する可能性がある。
スポーツカーブランドが「SUV」を作るワケ
クロスオーバーやSUVに対するマクラーレンの方針転換は、間違いなく他社の成功を受けてのものだろう。ポルシェやランボルギーニといった高級ブランドから発売されているSUVモデルは、従来のスポーツモデルを大きく上回る販売台数を記録し、莫大な利益を生み出している。
例えば、ポルシェは2021年の販売台数が初めて30万台を超え、最高記録を更新した。SUVのマカンとカイエンを合わせると、その販売台数の半分以上を占めることになる。一方、スポーツカーの911はわずか3万8464台であった。
この傾向はランボルギーニのウルスについても同様で、2021年には約2対1の割合でスーパーカーのウラカンを上回った。
アストン マーティンDBXは、2021年に同社の世界販売台数の半分を占めた。
最も利益率の高いスーパーカーメーカーであるフェラーリでさえ、年内に同社初のクロスオーバー車「プロサングエ」を発表する予定だ。プロサングエは、フェラーリの伝統的な自然吸気V12エンジンを搭載する。
マクラーレン社内で起きた大きな変化
マクラーレンの人事面でも大きな変化が起きている。ポルシェで10年以上にわたってカイエンとマカンの開発を監督し、2014年にはフェラーリで最高技術責任者を務めた(プロサングエのコンセプトにも携わっている)ドイツ人エンジニアのマイケル・ライターズが、7月1日に新CEOに就任するのだ。
前任者のマイク・フルウィットは、クロスオーバーやSUVに興味を示さないマクラーレンの姿勢について、最もよく引き合いに出される人物である。昨年末、マクラーレン・グループ全体の経営陣が一新されたのと時を同じくして、彼は説明もなく突然退任した。
マクラーレンの新型クロスオーバーについて、内部関係者によると、コンパクトさ、軽量さ、洗練されたエアロダイナミクスによる性能効率という、確立された伝統に忠実でありたいと考えているようだ。
それを実現するためには、2028年頃に実用化されるであろう全個体電池技術による、小型・軽量化かつ高いエネルギー密度を持つバッテリーが必要となるはずだ。
現在のところ、マクラーレンはクロスオーバーの発売計画について公式なコメントを出していないが、内部関係者は「このアイデアに対する意欲」を認めている。
マクラーレンは昨年、「ソラス(Solus)」、「アオニック(Aonic)」、「Aeron(アーロン)」という名称の商標登録を申請している。後者のアーロンは、ヘブライ語で「力のある山」という意味を持ち、クロスオーバーの車名には適していると言える。