新型ホンダ・ステップワゴン ユーザー親子に寄り添う福祉車両 リクライニング式の車椅子にも対応

公開 : 2022.06.16 05:45

新型「ステップワゴン」の進化に注目。リクライニング式の車椅子も乗車できる福祉車両は、ユーザーの声を集めて作り込みました。

車椅子の乗員にも、3列目からの景色を

5月に新型が発表されたステップワゴンには、2種類の福祉車両が用意される。

2列目、3列目、もしくは両方に車椅子ごと乗車できるタイプと、サイドリフトアップシート車。

リクライニング式の車椅子(前後長が長い)が2列目に乗車できるよう、通常より後ろの位置にも固定ポイントを設けた。小児介護されているご家族から現在使っているものの写真を送ってもらい導き出した絶妙な固定位置で、車椅子をチルトさせた状態でも前後の座席とぶつからない。
リクライニング式の車椅子(前後長が長い)が2列目に乗車できるよう、通常より後ろの位置にも固定ポイントを設けた。小児介護されているご家族から現在使っているものの写真を送ってもらい導き出した絶妙な固定位置で、車椅子をチルトさせた状態でも前後の座席とぶつからない。    前田惠介

3列目に乗車できるのも、ステップワゴンの3列目シートが床下収納式だからこそ。

他社は跳ね上げ式のため、3列目に乗ることができても両サイドの窓が塞がれ視界が閉ざされた状態となってしまう。

ホンダの福祉車両担当の営業・マーケティングのスタッフは全員、介護士の資格を持っているという。

そして、今回のステップワゴン福祉車両の開発に当たっては、小児介護にあたる家庭にアンケートを取ったり、現在使用している車両の写真を送ってもらうなどし、現場に寄り添って一緒に作ってきたそうだ。

先代の6~7割がスパーダだったことから今回、ベース車両はスパーダに1本化。まず、福祉車両とわからない外観にこだわった。

ユーザーの声を形に 動線/安全性の進化

質感を感じさせるプラチナ調クロームメッキもベース車の上位グレード「プレミアムライン」と同じものだ。

リアの、バンパー部から開閉する大型テールゲートは専用設計。乗降時のスロープの傾斜を緩やかにするため配慮されている。

車椅子用の電動ウィンチの主電源スイッチは車両の左側にある。介護者がウィンチの操作をした後、そのまま腕を挙げるだけで届く場所にパワーテールゲートのボタンを配置した。なお、スロープ/タラップも搭載されているので、ゲートは専用設計だ。
車椅子用の電動ウィンチの主電源スイッチは車両の左側にある。介護者がウィンチの操作をした後、そのまま腕を挙げるだけで届く場所にパワーテールゲートのボタンを配置した。なお、スロープ/タラップも搭載されているので、ゲートは専用設計だ。    前田惠介

そのスロープは耐荷重200kgで油圧ダンパーが装備される。

車椅子は電動ウィンチで引き上げるが、それらの操作スイッチが車両左側にあるため、パワーテールゲートのスイッチも左側に移設されるなど、動線を集約することで介護者の負担を少なくしている。

また、スロープをロックしないとテールゲートが動かないよう連動させることで安全性も確保している。

リクライニング式の車椅子は、前後長を必要とするが、今回、デモで用意された2列目用ではフロアの固定具が2か所設定されているため対応可能だ。

ちなみに、大型テールゲートの採用、フローリングやカーペットのフロアも専用設計されていることにより、標準車に対してリアが40~80kg重くなっているが、サスペンションは標準車と同じで、タイヤの指定内圧を上げることで対応している。

どうやって、専用設計を小さい価格差で?

サイドリフトアップシート車は、サイドサポートのある先代ステップワゴンのシートを採用し、そのシートが回転・昇降して2列目に収まる。

その際、つま先が当たらないよう、絶妙な軌道で動くのには感心した。さらに、電動スライド、リクライニング機能も備え、快適性も考慮されている。

3列目に車椅子と乗員が隣同士で座れるパッケージの存在は、中型ミニバンの福祉車両では珍しい。介護者がすぐ横でサポートできるし、友達と隣り合ってドライブの道中を楽しむこともできる。サイドリフトアップシート車(奥)はベース車+14万円という価格に抑えた。
3列目に車椅子と乗員が隣同士で座れるパッケージの存在は、中型ミニバンの福祉車両では珍しい。介護者がすぐ横でサポートできるし、友達と隣り合ってドライブの道中を楽しむこともできる。サイドリフトアップシート車(奥)はベース車+14万円という価格に抑えた。    前田惠介

車椅子仕様もサイドリフトアップシート車も、通常のシートと横並びの位置に固定されるため、同乗者とのコミュニケーションも取りやすい。ホンダの福祉車両は8割が個人ユースだという。だからこそ、たとえばミニバンとしての日常の使い勝手にも配慮している。

車椅子仕様車が355万5000円~で、ベース車プラス約30万円、サイドリフトアップシート車は339万6000円~でベース車プラス約14万円。

専用設計や機能・装備を鑑みればバーゲンプライスと言える。

福祉車両に関しては、「わたし達ホンダの企業理念でやっている」ため、このような価格に抑えられているそうだ。なお、消費税は非課税となっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    佐藤久実

    Kumi Sato

    大学在学中にレースデビューし、耐久レースをメインに活動。ニュルブルクリンク24時間レース、スパ・フランコルシャン24時間レースで入賞を果たす。モータースポーツで培ったスキルをベースにインストラクターとしても活動。東海大学工学部動力機械工学科非常勤講師、芝浦工業大学特別講師の経験あり。日本カー・オブ・ザ・イヤー、World Car Awards、日本ボート・オブ・ザ・イヤーの選考委員も務める。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)

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