小さなクルマが起こした奇跡 ホンダ・シビックの50年を振り返る 後編 8代目からe:HEVまで
公開 : 2022.06.19 18:25
まさかのレーシングワゴン
2010年代前半の英国ツーリングカー選手権(BTCC)で、ホンダはシビック・ハッチバックでわずか4シーズンの間に2つのドライバーズタイトルと4つのマニュファクチャラーズタイトル、チームタイトルを獲得するなど、圧倒的なパワーを誇った。
そして2014年には、BTCCで20年ぶりに見られるワゴンタイプ、シビック・ツアラーを投入する。ライバルチームのセダンやハッチバックに比べ、ワゴンは空力的に不利であるにもかかわらず、シーズン前には楽観的な見方もあった。
しかし、いくつか勝利は得たものの、優勝候補にはなれなかった。結局、ホンダは1シーズンでツアラーを諦め、ハッチバックに戻してしまった。
BTCCでの成功
ツアラー引退後、ホンダは再びBTCCのトップに躍り出る。
スコットランド出身のゴードン・シェーデン(1979年生まれ)が2015年、2016年ともにトップドライバーとなり、彼はチャンピオン獲得数を3つに伸ばしたのであった。
世界のレース
シビックは、2005年から2017年まで開催された世界ツーリングカー選手権(WTCC)と、その後継である世界ツーリングカーカップ(WTCR)にも参戦しているが、BTCCに比べるとその成果は質素なものであった。
2013年のWTCCでマニュファクチャラーズの王座を獲得した以外、タイトルはないが、シビックはこれまでに40回のレースウィンを重ね、1シーズン平均2回強の勝利を挙げている。
ヒルクライム
モータースポーツにおけるシビックの成功は、決してサーキットレースに限ったものではない。2016年、英ベルファスト郊外のクレイガントレット(公道)で開催される英国ヒルクライム選手権に出場したタイプRは、当時69年の歴史を持つ同レースにおいて、純正仕様の市販車として初めてポイントを獲得した。
本稿執筆時点では、この偉業は後に1度だけ(同じくクレイガントレットで)レクサスRC Fによって繰り返されている。
10代目
2017年、シビックが日本に帰ってきた(北米発売は2015年)。10代目はすべての市場で単一のモデルとなり、地域によってデザインが微妙に異なる程度で大きな違いはない。同じプラットフォームでセダン、ハッチバック、クーペ(日本未導入)が作られ、いずれも先代より長く、低くなったほか、洗練されたマルチリンク式リアサスペンションが採用された。
日本仕様は1.5Lのガソリンエンジンのみが搭載されるが、欧州では1.0Lのターボも用意されていた。初代シビックより小排気量のエンジンだが、129psという出力は1972年当時とは比べ物にならないほどパワフルで、レーシングカーならまだしも、公道向けの市販車ともなればSF小説の域を出ないものだったろう。