公道では受け止めきれない能力 フェラーリSF90 スパイダーへ試乗 合計1000psのPHEV
公開 : 2022.06.22 08:25
一層のドラマチックさが加算
SF90 スパイダーのスピードやレスポンスの凄さを表現するには、何か新しい語彙が必要に思える。ギアやドライビングモードに関わらず、尋常ではない。
筆者は数年前にラスベガス・モーター・スピードウェイでドラッグレース・マシンを運転した経験があるのだが、その爆発的な勢いに近い。右足へ力を込める度に、そのゼロヨン加速の記憶が蘇ってくる。この表現が近いかもしれない。
猛烈な速さという点は、SF90 ストラダーレでも共通している。だがスパイダーなら、ルーフを開き、低速域で宇宙船のような駆動用モーターの唸りを楽しむこともできる。
あるいは、比較的すぐに目覚めるV8ツインターボ・エンジンの雄叫びも。オープンにすれば、既に圧倒されるような体験に、一層のドラマチックさが加算される。
実際のところ、PHEVであっても駆動用バッテリーの容量は7.9kWhと小さい。3基の駆動用モーターは、エンジンをアシストするという機能へ主軸があるといっていい。
また、フロント側の2基のモーターはトルクベクタリング機能も果たし、クイックなステアリングラックと相乗して、信じられないほど鋭いコーナリングを実現している。トラクションも凄まじい。ハイスピードでの走行に、確かな自信を与えてくれる。
サーキットでなければ存分に楽しめない
SF90 スパイダーは、SF90 ストラダーレより良いか。公道用のスーパーカーとしてはイエスだろう。クーペのストラダーレと比較して、動的能力に明らかな妥協は感取されない。ルーフを開けば、一層の喜びが待っている。
ただし、公道を走れば低すぎる制限速度につまずく。EVモードで走れる距離は限定的でもある。もっともそれは、クーペのストラダーレでも共通すること。SF90 スパイダーの能力は、公道では受け止めきれない。サーキットでなければ、存分には楽しめない。
技術進化に伴い、現実世界においてはドライビング体験へ制限が生まれている。この問題は、現代のスーパーカーすべてに当てはまるものではある。爽快な加速力を備えていても、パワーは高すぎ、シャシーは複雑すぎる。
296 GTBという、明るい未来を示唆する存在もある。近未来のハイブリッド・スーパーカーでも、一般道でシャシーの能力を引き出す至福の体験は許されそうだ。それでも、限界領域までには迫れないのだけれど。
フェラーリSF90 スパイダー(英国仕様)のスペック
英国価格:34万4900ポンド(約5518万円)
全長:4704mm
全幅:1973mm
全高:1191mm
最高速度:339km/h
0-97km/h加速:2.5秒
燃費:−
CO2排出量:149g/km
乾燥重量:1670kg
パワートレイン:V型8気筒3990ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:7.9kWh
最高出力:1000ps(システム総合)
最大トルク:81.4kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック