これぞ元祖ジープ ウイリスMB/フォードGPW/ホッチキスM201 英国版クラシック・ガイド 前編
公開 : 2022.07.09 07:05
必要から生まれたオフローダー、元祖ジープ。実用的に乗って楽しめるクラシックを、英国編集部がご紹介します。
遥かに能力に長けていたウイリスMB
世界の雲行きが怪しくなっていた1940年、アメリカ陸軍省は135社もの製造企業へ、最高出力40psで四輪駆動という偵察車両の開発を打診した。わずか49日間という短期間で走行可能なプロトタイプを完成させたのが、アメリカン・バンタム社だった。
バンタム社の設計は非常に優れていたものの、生産力には限りがあった。そこで情報の一部をフォード社とウイリス社へ開示し、協力を仰ぐことでジープの原型となるクルマが完成。バンタム社は、牽引トレーラーの生産契約を得ることになった。
正式採用となったウイリスMBの量産が始まると、フォード側も需要を賄うためにGPWとしてライセンス生産で対応。ジープと呼ばれるようになったMBとGPWは、連合軍全体へ急速に展開していった。
元祖ジープは、フォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1)がベースとなった、後輪駆動のキューベルワーゲンより遥かに能力に長けていた。第二次大戦が終結しても、さらに数十年以上、世界各国の軍隊を支援し続けてきた。
フランス陸軍は能力を認め、ホッチキス社がライセンスを取得し、MBの改良版を1966年まで製造している。第二次大戦中に生産されたMBとGPWは合わせて約65万台で、ホッチキスのM201は約2万8000台。他方、キューベルワーゲンは約5万台だった。
日常的に乗れるクラシックカーとして好適
現在残っているジープで状態の良いものは、ホッチキス社製であることが多い。その理由は、より肉厚な素材を用いたシャシーと、タイミングチェーンではなくタイミングギアを用いたエンジン構造などが挙げられる。
トランスミッションのベアリングやクラッチなども、より質の高いものが用いられていた。だが何より、実際の戦争で用いられなかったことが1番大きい。
頻度の高い日常的な利用にも耐え、実用的なジープは、クラシックカーとしても好適。一部のカーファンはその価値に気づき、価格も上昇傾向にある。
複数のメーカーで作られたジープだが、見分ける特徴が幾つかある。フォードGPWの場合、シャシー番号はフロント・クロスメンバーの裏側にある、左側のシャシーレールに刻印されている。
一方のウイリスMBでは、同じフロント左側のシャシーレールへ、シャシー番号が刻印されたプレートが貼られている。ホッチキスM201の場合は、フロントグリル前のシャシーレッグに、縦の補強材が追加されている違いがわかりやすい。
フロントグリルの穴の加工も、M201だけが違う。MBとM201では共通して、フロントのクロスメンバーが丸いパイプ状。GPWは角型のチャンネル材が用いられているほか、多くの部品にフォードやF8といった刻印が施されている。
M201では、ダッシュボードの継ぎ目金具にスポット溶接の跡が残っている。ボンネットを開閉する長いピアノヒンジは、MBが9セクション、GPWは11セクション、W201は13セクションと加工が異なる点も、見分けやすいポイントだ。