ガソリン高騰でも楽しみたい スズキ・カプチーノ 1.0L以下のクラシック 前編

公開 : 2022.07.10 07:05

シリアスなドライバーズカー

シフトチェンジでアクセルペダルを緩めれば、ウェイストゲート・バルブが開き、パシュっとエンジンも一息。ドライバーの気持ちをくすぐった。幼稚と思えるトリックとはいえ、大人になっても楽しいモノは楽しいのだ。

そんなクルマづくりは、スタイリングにも反映していた。アニメキャラクターのように、クリっと大きな目のヘッドライトが付いた小さなボディは、なんとも可愛い。

スズキ・カプチーノ(1991〜1997年/英国仕様)
スズキカプチーノ(1991〜1997年/英国仕様)

バブル経済を象徴していたといえるのが、アレンジ可能なルーフ。ハードトップとTバールーフ、ロードスターという3タイプを、1台のカプチーノで実現していた。折りたたみ可能なルーフは、リアの荷室にしまうことも可能だった。

カプチーノは、シリアスなドライバーズカーでもある。短いドアからの乗り降りは少々難しいものの、1度シートに座ってしまえば、スズキらしく考えられた人間工学が迎えてくれる。

スポーツカーと呼ぶのに不足ないほど、5速MTは軽量で正確。機械的な感触も豊か。ドライバーの正面へにきれいに並んだ3枚のペダルも、多くの軽自動車とは異なる部分といえる。

パワーアシストの付かないステアリングも秀逸。ダイレクトでクイックだが、余計なノイズは手のひらへ伝わってこない。

乗り心地は適度にしなやかで、軽い車重のおかげでボディロールは最小限。サスペンションはマルチリンク式を採用し、よほど傷んだ舗装でない限り振動に悩まされることもない。軽さのメリットが発揮されていた。

英国にも正規輸入されていた

基本的には日本専売の軽自動車規格となるスズキ・カプチーノだが、実は英国にも正規輸入されている。1110台が売れており、現実的に中古車として探すことも難しくない。

英国スズキで技術者をしているポール・メイ氏も、その1台のオーナー。ただし、カプチーノは防錆処理が充分ではなく、アンダーボディは溶接による大手術を受けている。現存する多くが、サビに悩まされているという。

スズキ・カプチーノ(1991〜1997年/英国仕様)
スズキ・カプチーノ(1991〜1997年/英国仕様)

「雨水がルーフからドアフレームを伝って、サイドシルの中を流れていくんです。ここの排水ポイントが詰まると、腐食を促します」。とメイが説明する。

しかし、サイドシルの補修部品はまだ入手可能とのこと。ほかのメカニカル系部品も、英国でも手に入るという。カプチーノの部品の多くが、同時期の既存モデルと共有されていた強みといえるだろう。

スズキ・カプチーノ(1991〜1997年/英国仕様)のスペック

英国価格:1万1995ポンド(新車時)/9000ポンド(約148万円)以下(現在)
生産台数:2万8010台(合計)
全長:3295mm
全幅:1395mm
全高:1185mm
最高速度:136km/h
0-97km/h加速:8.0秒
燃費:17.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:725kg
パワートレイン:直列3気筒657ccターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:64ps/6500rpm
最大トルク:8.6kg-m/4000rpm
ギアボックス:5速マニュアル

この続きは中編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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