ガソリン高騰でも楽しみたい フィアット850 スパイダー/オースチン・セブン 1.0L以下のクラシック 中編
公開 : 2022.07.10 07:06
世界中が悩まされる原油高騰。英国編集部が、こんな時代も楽しめる排気量1000cc以下のクラシックを選出しました。
もくじ
ーフィアット850 スパイダー(1965〜1972年)
ー当時の量産リアエンジンでベストの操縦性
ーオースチン・セブン(1923〜1939年)
ー運転する喜びを満喫できる最小のクルマ
ーフィアット850 スパイダーとオースチン・セブン 2台のスペック
フィアット850 スパイダー(1965〜1972年)
フィアットのスパイダーと聞くと、珍しいエキゾチックモデルに聞こえるだろう。だが、1965年から1972年にかけて製造された、リアエンジンの850 スパイダーは約12万4000台も売れている。
モデル後期には843ccから903ccへ排気量が大きくなり、スタイリングもリフレッシュ。立ち上がったヘッドライトが与えられ、850 スポルト・スパイダーと呼ばれるようになったが。
850 スパイダーには右ハンドル車が存在しない。アメリカ市場が主眼に置かれ、彼の地で英国製スポーツカーとしのぎを削っていた。
今回ご登場願ったのは、ヘッドライトカバーの付いた前期型。ロブ・テイラー氏が30年を掛けて大切にしてきた1台だという。彼は、850のキャンピングカーとサルーンも所有しているという、クラシック・フィアット・マニアだ。
カロッツエリアのベルトーネ社が手掛けたボディは、驚くほど小さい。しかし乗り降りはしやすく、パッケージングは良く考えられている。ラゲッジスペースは広く、フードはきれいに折りたたまれ、エンジンルームにもゆとりがある。
850 スパイダーでは、フロントのディスクブレーキと、フェイクウッド・リムのステアリングホイール、5枚のアナログメーターという豪華装備が標準装備だった。テールゲートを開くと、エグゾースト・ヘッダーが並んだ直列4気筒が収まっている。縦方向に。
ペダルとステアリングホイールとの位置関係は、若干オフセットしている。だが、身長の高いドライバーでも問題なく運転席に座れる。
当時の量産リアエンジンでベストの操縦性
エンジンは滑らかに、静かに回転し、サルーンより13psも高い49psを発揮。最高速度144km/hを実現していた。燃費は、穏やかな気持ちで流せば18.0km/L近くまで伸びるというが、現実的には14.0km/L前後のようだ。
ロケットのように加速はしないが、軽くダイレクトなステアリングとしなやかな乗り心地が相まって、走りの質感は良い。エンジンは7000rpmのレッドラインまで軽快に回る。
クラッチペダルは軽く、漸進的につながる。4速MTの扱いには注意が必要。ギアの回転を調整するシンクロメッシュが弱く、特に2速ではタイミングを計る必要がある。
850 スパイダーの操縦性は、1960年代後半の量産リアエンジン・モデルとしてベストにランクインできる。コーナリングは基本的にニュートラルで、低速コーナーへ突っ込みすぎるとアンダーステアへ転じる程度。
そもそも、テールを振り回すほどパワーはない。派手な身振りを楽しむモデルでもない。
北米市場では、トライアンフ・スピットファイアなどより安価に売られていた850 スパイダー。アルファ・ロメオは高すぎる、という輸入車好きのオシャレなドライバーが好んで購入した。
そのため、2022年に状態の良い中古車を探すなら、イタリアかアメリカまで範囲を広げる必要がある。堅実的といえる価格で、英国市場にも少数は流通しているようだが。
部品の入手は徐々に難しくなっている。ボディパネルは殆ど手に入らないという。さらにテールライトは、ランボルギーニ・ミウラと同じ部品。維持が簡単ではないことは間違いない。
協力:ロブ・テイラー氏、フィアット・モータークラブGB
画像 1000cc以下の楽しいクラシック カプチーノ/スプライト/850 スパイダー/スマート・ブラバス/オースチン・セブン ケータハム・セブンも 全67枚