パナソニック、JVCケンウッドが出資 「ビューレカ」とは エッジAIと通信型ドラレコの可能性
公開 : 2022.06.23 05:45
日本の人手不足や、労働生産性の低さは社会的な課題。パナソニックとJVCケンウッドなどが手を組み、社会を支える「エッジAI」の新会社が生まれます。
「エッジAI」と「クラウドAI」 どう違う?
パナソニックHD(ホールディングス)、JVCケンウッド、WiL(ウィル)の3社が、『エッジAI』プラットフォームを提供する新会社「Vieureka(ビューレカ)」に共同出資すると発表した。
新会社は2022年7月1日から営業を開始する。
ビューレカが展開するのは、パナソニックHDの研究開発部門が開発したエッジAIプラットフォームサービスで、AIによるエッジ処理が可能な「ビューレカ・カメラ(写真)」を軸として、遠隔地からマネジメントソフトウェアで管理されるものだ。
すでに2017年からパナソニック傘下で事業化されており、65社がそのパートナープログラムに参画していた。新会社ではそこにJVCケンウッドが資本参加し、これまでの店舗・介護を中心とした事業に加え、通信型ドライブレコーダーによる車載事業にも範囲を広げていくこととなった。
そもそも『エッジAI』とは、IoT機器やセンサーなどの端末に高性能なエンジンを搭載し、端末が自らのAI処理を行う技術のこと。
端末で収集したデータを端末内で処理することで、リアルタイムな判断ができるようになり、プライバシーの担保・通信コストの削減につながるなどのメリットがある。
一方で、これまで一般的だった『クラウドAI』は、端末が収集したデータはそのまま通信によって送られる。端末の能力は低くてもよいので、インフラ整備のコストは低くて済む。
しかし、サーバーに届いて結果を反映するのにどうしてもラグが発生するし、データが動画ともなればその通信費は膨大になる。
そうした中でビューレカがエッジAIに力を注ぐのは、労働生産性向上のために、ますます重要度を増してくると確信しているからだ。
日本の課題にメス 5年で80億ドルの市場へ
ビューレカの代表取締役に就任した宮崎秋弘氏は、「日本は単位時間当たりの労働生産性はOECD加盟38か国中23位と残念な結果となっている。それだけに、人の対応が必須と考えられている現場の生産性向上が必要であり、その労働生産性向上を目指して、ハードウェアとAIを掛け合わせたエッジAIの活用が始まっている」と述べる。
そして、その市場規模は、2027年までに80億ドルにまで成長するとの予測データ(Astute Analytica)を紹介した。
これまでにビューレカは、パナソニックのVieureka事業としてエッジAIプラットフォームをいち早く提供し、共創パートナーと共に社会実装を推進してきた。その事業は、小売店舗での年齢・性別・人物の検知のほか、工場・建設現場では入退出管理で、介護施設では離床検知として役立てられてきた。
しかもビューレカでは、世の中のエッジAIの多くが実証実験にとどまってるのに対し、すでに社会実装を行って実績を上げていることの優位性を持つ。
宮崎氏は、「特にスマホアプリのように遠隔でアップデートでき、エッジAIの管理までも実現していることが社会実装を進展させる要素にもなっている」とし、「その先の展開としてBtoBだけでなく、最終的にコンシューマーにつながる“BtoBtoC”に向けた事業展開も検討していた」と話す。
今回、JVCケンウッドの出資が伴ったことで、通信型ドライブレコーダーを活用する“BtoBtoC”も視野に入れた車載分野への展開が加わることになったわけだ。