ミドシップ・スポーツ比較試乗 ロータス・エミーラ x ポルシェ718ケイマン 精鋭を超えるか? 後編

公開 : 2022.07.02 09:46

タイヤや路面の状態を伝えるステアリング

そして、ポルシェが車高の低いサスペンションのストロークを使い切り、姿勢制御に陰りが見え始めるような区間で、ロータスの無限に思える減衰特性が光り始める。見事な落ち着きを保ってくれる。

乗り心地以上に、路面の状態をステアリングホイールを通じて感じ取ることができる。適度にクイックなレシオと重み付け、フィードバックが相まって、ワインディングと素晴らしいマッチングを披露する。

レッドのロータス・エミーラ V6 ファーストエディションと、グリーンのポルシェ718ケイマン GTS 4.0
レッドのロータス・エミーラ V6 ファーストエディションと、グリーンのポルシェ718ケイマン GTS 4.0

切り始めは穏やかで、タイヤのキャンバー角が変化する様子すら感じ取れる。感触が豊かだとしても、不安定に感じさせることはない。

コーナーへ飛び込んでいけば、タイヤのサイドウォールやサスペンションが縮んでいく様が伝わってくる。近年のクルマを俯瞰しても、ここまでのフィーリングをドライバーへ与えてくれるモデルは、極めて限定的だ。

他方、718ケイマンのストロングポイントは、よりキビキビとリニアに反応するシャシーとエンジン。エミーラよりひと回り小さいボディサイズと、高精度な操縦性を併せ持ち、やや薄い感覚的な部分を補っている。実際、操縦性のバランスは優れている。

6速MTのフィーリングも良い。回るほどに勢いを増していくような、自然吸気の水平対向6気筒エンジンも載っている。V6エンジンをスーパーチャージャーで過給するエミーラの方が、ギア比の特性もあって中間加速は鋭いけれど。

どちらのクルマも、意欲的に鋭く運転することが楽しいことは間違いない。そして、日常的に運転するのに不足なく快適でもある。

正のスパイラルを加速させるエミーラ

冷静に比較すると、ロータスの仕上りは非常に素晴らしい。だがポルシェの方が、僅かながら、より優れている。

エヴォーラから大幅な進化を遂げたエミーラは、評価するべき点が多い。だとしても、快適でマナーが良く、時々悪ふざけもできる718ケイマンは、スポーツカーの万能選手としての地位を譲ることはない。

ロータス・エミーラ V6 ファーストエディション(英国仕様)
ロータス・エミーラ V6 ファーストエディション(英国仕様)

10年前に平均的なスポーツカーの購買層へ、エヴォーラとケイマンを試乗してどちらを選ぶか聞いたとしたら、恐らく90%以上は後者を選んだはず。だが、今は違う。

2022年にエミーラと718ケイマンを乗り比べたら、10%から20%くらいは、前者を選択するだろう。ポルシェが選ばれる割合と比べれば、まだ小さな数でしかない。それでもこの変化によって、へセルの生産能力には2倍から3倍が求められることになる。

エミーラは、ロータスの正のスパイラルを一層加速させるに違いない。小さくも重要な一歩になる。数年後には、ポルシェとより対等に戦えるモデルが誕生するかもしれない。新しいブランドの、正しい未来への入り口だといえるだろう。

718ケイマンとエミーラ 2台のスペック

ポルシェ718ケイマン GTS 4.0(英国仕様)のスペック

価格:6万5390ポンド(約1092万円)
全長:4379mm
全幅:1801mm
全高:1295mm
最高速度:292km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:9.2km/L
CO2排出量:247g/km
乾燥重量:1405kg
パワートレイン:水平対抗6気筒3995cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:400ps/7000rpm
最大トルク:42.7kg-m/5000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

ロータス・エミーラ V6 ファーストエディション(英国仕様)のスペック

英国価格:7万6415ポンド(約1245万円/試乗車)
全長:4412mm
全幅:1895mm
全高:1224mm
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:4.3秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:1440kg
パワートレイン:V型6気筒3456ccスーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:405ps/6800rpm
最大トルク:42.7kg-m/2700rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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