メルセデスAMGの未来像 「ビジョンAMG」コンセプト、英国で一般公開 2025年市販化見込み

公開 : 2022.06.23 22:05

低車高ながら室内スペースも確保

全長5100mmと、メルセデスAMG GT 4ドア・クーペよりわずかに長く、競合のポルシェタイカンより147mm長い。ホイールベースだけでも3000mm以上に及ぶ。

キャビンは、突出したフェンダーの間にうまく収まり、後方に向かってテーパーがかかっている。完全なフラットフロアを誇るEVAプラットフォームとは異なり、AMG.EAではリアにフットウェルが設けられ、バッテリーはリアシートの下に格納される。

メルセデスAMG「ビジョンAMG」コンセプト
メルセデスAMG「ビジョンAMG」コンセプト    メルセデスAMG

「これにより、リアのスペースと快適性を向上させることができます。非常に低いクルマですが、ロングホイールベースなので、4人がしっかり乗れます」とレシュニックは述べている。

AMG.EAプラットフォームの詳細は不明だが、バッテリーが構造の一部となるセル・トゥ・シャシーデザインを採用し、低重心を実現していると予想される。

また、パワートレインに関する具体的な情報もまだ発表されていないが、メルセデス・ベンツは最近英国のエンジニアリング会社YASAを買収し、その電気モーターをAMG.EAプラットフォームに独占的に使用する予定だ。

現在、メルセデス・ベンツの完全子会社として運営されているYASAは、コンパクトな「軸流」モーターを専門としている。メルセデスの現行EVで使用されているラジアルユニットよりも軽量かつコンパクトなサイズで、高い効率とパワーを発揮するという。

メルセデスAMGのフィリップ・シーマーCEOは、「より高い出力密度と連続的なトルク伝達により、ドライビング・パフォーマンスの未来を再定義します。わたし達はすべてをゼロから開発しているのです」と語る。

ビジョンAMGの市販モデルには、AMG専用のセルを使用した特注バッテリーも用意されており、これはすでにPHEVのGT 63 Eパフォーマンスに採用されている。また、メルセデス・ベンツは2025年以降の市販モデルに、米国のバッテリー素材企業シラのシリコンアノードを採用することを決定している。従来のグラファイトアノードに比べてエネルギー密度を40%向上させ、航続距離を大幅に延ばすことができるとされている。

未来のAMGのデザインとは?

英AUTOCAR編集部は、メルセデス・ベンツのエクステリアデザイン責任者、ロバート・レシュニックにインタビューを行った。

――デザインで優先したことは何でしょうか?

「車高が低く、スタンスが良く、4ドアで実用性の高いクルマを求めていました。AMG.EAプラットフォームではこれを実現できます。そのために、何度もプロポーショナルモデルを作り、形状を整えていきました。サーフェイスは非常に滑らかで、余計なラインはまったくありません。ヴィジョンEQXXの要素を取り入れているのがわかると思います」

メルセデス・ベンツのエクステリアデザイン責任者、ロバート・レシュニック氏
メルセデス・ベンツのエクステリアデザイン責任者、ロバート・レシュニック氏

「このようなクルマのエアロダイナミクスは、抵抗とダウンフォースの両方を低減させるうえで非常に重要です。可動式エアロパーツは、市販モデルにも搭載される予定です。いろいろなアイデアを用意していますよ」

――AMGの伝統的なデザイン要素をどのように再解釈したのですか?

「グリルにイルミネーションを施し、より目立つようにしました。EVでは、空気を取り込むためのグリルは必要ないのですが、このコンセプトには親しみやすい顔を持たせたかったのです。グリルは、他のどのAMGモデルよりも低い位置にあります」

「また、ヘッドライトも新しい星のデザインで作り直しました。新しいシグネチャー要素にしたいのです。プロジェクト・ワンと同様、ボンネットにはメルセデス・ベンツのロゴがステンシル(転写)されています」

――次はどんなEVが登場するのでしょうか?

「AMG.EAプラットフォームは、デザイン面で大きな幅を与えてくれます。EVAプラットフォームよりもはるかに低い位置まで持っていくことができるのです。あまり多くは語れませんが、1つのモデルのためだけに新しいプラットフォームを開発するわけではありません。ビジョンAMGはそのスタートです。今後、AMG専用の電動モデルが他にも出てくることは間違いないでしょう」

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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