多くの強みが控え目ボディに フォルクスワーゲン・タイゴ 1.5TSI 150 Rラインへ試乗

公開 : 2022.07.11 08:25

ライバルよりゆとりのある車内とトルク

ダッシュボードにはデジタルコクピットとフォルクスワーゲンが呼ぶ、10.3インチのモニター式メーターパネルと、その横に大きなインフォテインメント用タッチモニターが据えられる。エアコンは、2ゾーンタイプとなる。

前席側は、よほど身長の高い大人でない限り、快適に座れる空間がある。後席側も、小柄な大人ならゆったり過ごせるし、子供から不満は出ないはず。ホイールベースは、Tクロスより長い。

フォルクスワーゲン・タイゴ 1.5TSI 150 Rライン(欧州仕様)
フォルクスワーゲン・タイゴ 1.5TSI 150 Rライン(欧州仕様)

荷室はフロアの高さを2段階に調整可能で、驚くほど広い。低く設定すれば、440Lの容量が得られる。1サイズ大きいハッチバックのゴルフより2割ほど広く、家族で週末を楽しく過ごすための荷物も、不足なく積めると思う。

1.5L TSIエンジンにはマイルドハイブリッドが組み合されておらず、燃費効率が驚くほど良いわけではない。運転を楽しみたくなるほどの動力性能も得てはいない。それでも、トルクとレスポンスは上々。走りは平均以上といえる。

25.3kg-mという豊かな最大トルクを1500rpmから発揮するため、7速DSGはテンポ良くシフトアップ。発進からストレスフリーに、リラックスしたクルージングへ短時間で移行できる。都市部の交通でも、洗練した印象を味わえる。

ただし、DSGは軽負荷時には上質なものの、高負荷時の振る舞いはやや不器用。マニュアルモードで変速も可能だが、ドライバーによってはキックダウンの反応が鈍いと感じることもあるだろう。

常に余裕感があり日常的に運転しやすい

1.5L TSIエンジンは、積極的に走らせると少し張り詰めたノイズを放つ。軽快に吹け上がる性格でもなく、4000rpm以上まで回して楽しいと感じるユニットではない。

そのかわり、150psというクラス上のパワーを備えるだけあって、日常的な運転はしやすい。常に余裕感が伴う点は、エントリー・グレードにはない魅力といえそうだ。

フォルクスワーゲン・タイゴ 1.5TSI 150 Rライン(欧州仕様)
フォルクスワーゲン・タイゴ 1.5TSI 150 Rライン(欧州仕様)

燃費は現実的な条件で、市街地中心なら13.5km/L前後。高速道路や郊外の長距離なら、17.5km/Lくらいまで伸びる。

ステアリングホイールやペダル類の重み付けは、軽すぎず重すぎず。操舵時の反応は予想しやすく、乗り心地も快適。姿勢制御はゆったり気味だが、安心感は高い。フォルクスワーゲンらしい個性といってもいいだろう。

コンパクト・クロスオーバーのタイゴは、フォード・プーマのように運転へ惹き込まれることはないかもしれない。しかし、一貫した特徴がある。運転しやすく快適で、気張らずに高めの速度域で移動できる。

見た目以上の車内空間を備え、見た目はスマート。装備は充実している。運転が退屈ということはない。そして、2022年らしいモダンさもある。

ゴルフサイズのハッチバックに代わる、新しいスタイルのクルマとして選ぶのもいい。もちろん、シトロエンC3 エアクロスのような、BセグメントのSUVとして選ぶのもいい。

ただし、1.5TSI 150 Rラインの英国価格は3万270ポンド(約505万円)から。筆者が自分のために選ぶなら、もう少しお手頃なグレードにすると思う。

フォルクスワーゲン・タイゴ 1.5TSI 150 Rライン(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万3525ポンド(約559万円/試乗車)
全長:4271mm
全幅:1757mm
全高:1515mm
最高速度:212km/h
0-100km/h加速:8.3秒
燃費:16.5km/L
CO2排出量:138g/km
車両重量:1304kg
パワートレイン:直列4気筒1498ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/5000-6000rpm
最大トルク:25.3kg-m/1500-3500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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