メルセデスAMG EQS 詳細データテスト 楽に飛ばせて快適 低速域は洗練性が不足 質感は不満も

公開 : 2022.06.26 18:25  更新 : 2022.07.11 08:28

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

扱うべき物理的な力が非常に強いことを考えると、メルセデスがハンドリングに関して極端なスタビリティ志向にセッティングしたことは理解できる。トルク配分機構は全般的にフロントモーターを使いたがり、思い切り走らせるまでは期待するであろう後輪駆動的な挙動やバランスに持ち込むことを許容しないのだ。

そのため、公道上では、走りが前輪駆動的に感じられることもしばしばある。とはいえ、その程度はわずかなものだが。

ライン取りが容易で、スタビリティをうまく前面に出したハンドリングに、やや前輪駆動的なフィールと、アウディに似たニュートラル感が相まって、楽に飛ばせるクルマに仕上がっている。
ライン取りが容易で、スタビリティをうまく前面に出したハンドリングに、やや前輪駆動的なフィールと、アウディに似たニュートラル感が相まって、楽に飛ばせるクルマに仕上がっている。    LUC LACEY

それでも、このクルマは十分に好ましい。路上での位置決めはイージーで、鼻先の向きを変える動きは、比較的ダルかったSクラスよりだいぶ正確で素早い。

ダイレクトなステアリングが持ち味になっているところもあるが、メルセデスとしてはおもしろみのあるほうで、このブランドの主流となるセダンほどインフォメーションが遮断されたフィールではない。

切りはじめは不思議なくらい鈍いが、そこから先は手応えが増し、自信と安心感を持って、正確な操舵ができるようになる。本当のグリップレベルをはっきりと見せつけられてしまうことはめったにない。

なによりこのクルマはきわめて低重心だということもあって、自然に速く走らせられる感覚がある。しかもボディコントロールは抜け目なく、コーナーでは500kgくらい軽いクルマに感じさせてくれる。さすがにブレーキングでは、そういうわけにはいかないが。

苦もなく乗れて、設定次第で多少スポーティにもできる電動サルーンを探しているなら、それほどがっかりすることはないクルマだ。もっとも、ポルシェタイカンと同等か、それに近いものを期待するのは無理な話だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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