レクサスNX200t Fスポーツ

公開 : 2014.07.17 23:50  更新 : 2017.05.29 19:24

■どんなクルマ?

フランクフルト・モータショーで発表されたコンセプト・カーよりも市販版のルックスの方が優れているという点において、新たなレクサスNXは珍しいクルマだと言える。

コンセプト・カーの名前はLF-NXコンセプト、まるでサイボーグのような出で立ちはBMW X3と同サイズ、所属はコンパクトSUVクラスだ。

多少の差こそあれどレクサスがコンパクトSUVの開発を目論んでいることは想像できた。その結果としてトヨタの高級車部門は、今後20年の月日を費やして、拡大の一途をたどるドイツの強豪メーカーにかわる新たな牽引役を目指しているという。

仮にこのNXが我々を唸らせることになるならば、プレミアム・マーケットにおけるコンパクトSUVの分野で輝かしい存在感を放つことになるだろう。既にレクサスは、ヨーロッパで販売する売れ筋モデルのうち上位3位以内に入ることを明確に視野に入れているようだ。

ハンサム(そうでなかったとしても、少なくとも魅力的ではある)なこのクルマを初めてテストしたわけだだ、幸いにもぎこちなさと呼べるような側面を見ることはなかった。コンセプト・カーから大いにヒントを得た、エッジの効いたラインや人目を引くデザインは保守的という言葉を使う余地無きほどに新しい。

言い換えれば、トヨタRAV4などとは似ても似つかないデザインだということにもなる。

もちろん目新しいデザインだけがNXの ’取り柄’ というわけではない。なかでも新開発の2.0ℓターボ加給ガソリン・エンジンが採用されたこともビッグ・ニュースで、このユニットの他にはガソリン-電気ハイブリッドが用意される。またレクサスの中でも高い売上を誇るディーゼル・エンジンが組み合わせる予定は引き続きないとのことだ。

NX300hハイブリッドは標準ではFFとなるが、4WDもオプションとして選択することができる。英国での発売は10月から、価格は £29,495(514万円)となる予定だ。来年3月に発売予定のNX200tに限っては標準で4WDとなりFスポーツ・トリムを選ぶことも可能だ。車両価格は£35,000(610万円)、このモデルこそが今回テストに借りだしたものと同じものである。

■どんな感じ?

NXに乗り込む。キーを差し込む穴さえもなくそこには目新しい世界が広がる。トヨタやレクサスの作るキャビンは昔から知覚的な質の高いことで知られている。しかも使い勝手を犠牲にしない上で、高いデザイン性を発揮しているのだ。

NXのキャビンも例外ではない。目で見ても、肌を触れさせても高級感と質の高さを感じることができ、センター・コンソールに位置するスイッチ類の統率も見事だ。またタッチ・パッドと連携するインフォテイメント・ディスプレイの使い勝手も非常に素晴らしい。

そのタッチ・パッド、名前はリモート・タッチ・インターフェイスと名付けられ、スマートフォンほどの技巧は凝らされていないが十分に直感的に操作することができ、繊細すぎるといった印象もない。ほとんどのスイッチ類はエンジンを掛けずとも操作できることもここに書き加えておこう。

しかしながら一般道での試乗では我々を複雑な気分にさせたのだ。2.0ℓのターボ・ユニットは力強い238psを発揮し、35.7kg-mの最大トルクは1650rpmから流れ込む。新しい6速のオートマティック・ギアボックスを介して4輪にパワーが伝えられるのだ。ここまでは問題ない。

パッセンジャーを乗せずに走りだせば、0-100km/h加速に要する7.1秒というタイムを実現するのもそう難しいものではなく感じる。また80km/hから120km/hまでは6.0秒で駆け抜けることから、トップ・エンドへと続く中間加速力もたっぷりと兼ね備えていると言って差し支えないだろう。

ここからである。

力強いことは間違いない。しかしながら、新しいギアボックスを組み合わせていることを考えればもう少し気持ちよさがあってもいいはずなのだ。新しい6速ATはほとんどの状況においては不足ないのだが、急加速をしようとアクセルを踏み込んだとしてもキック・ダウンを躊躇う傾向があるのだ。

ライバルの持つギアボックスの滑らかさを考えると、ここは改善の余地あり。しかしながらドライブ・モード・セレクト(エコとノーマル以外にも数種類が用意される)をスポーツにスイッチすると、これらの不満は払拭される。

NXと同等のサイズや車重をもつ他の多くのクルマに引けをとらない性能があり、あらゆるシチュエーションで、もっとパワーがあればいいのに、などと感じることはなかった。高速道路を巡航する際も、レクサスをレクサスたらしめる静けさと快適性には驚くほかなかった。

こちらのモデルのエンジンに他にも、さらに経済的なハイブリッド・エンジンを組み合わせたモデルが有るだけに、NX200tのエンジンの経済性に大いなる期待を抱くことは出来ない。そんな中でも12.0km/ℓもの複合サイクル燃費は市街地から外に出れば達成できるだろうから心配することはなさそうだ。

車重ダイエットを徹底し、剛性を高めたボディは、フロントのマクファーソン・ストラットとリアのダブルウィッシュボーンの磨き上げと相まって、(楽しめはしないが)スムーズな乗り心地を寄与するに至った。

Fスポーツには電子制御可変ダンパーが備わり、225/60R18のタイヤを履く18インチのアロイ・ホイールが組み合わされる他に、内外装にもスポーティネスを感じさせる特別な装いが用意される。

ドライブ・トレインにも動力性能を向上させようという試みが見て取れる。しかしながら市街地速度での乗り心地はお世辞にもいいとはいえない。硬すぎるゆえに、快適性や柔らかさとは程遠いのだ。

しかしまぁレクサス側の思惑としてはダイナミックで夢中になれる味付けにしたいがゆえに、こういった乗り心地になってしまったのだから、あまりとやかくは言えないけれど。不満は高速域では幾分改善されるが、残念ながら落ち着き払っているとは言いがたい。

乗り心地に比べて操舵は優れる。豊かなグリップとボディ・コントロールの高さが相まって、ボディの横揺れを抑えながら滑らかにコーナーを駆け抜けるのだ。ただしステアリングからは活気が伝わってこないため、もう少しコミュニケーションを密にできれば更に出来栄えは良くなるだろう。現時点ではスポーツ・モードにセットすると、ステアリングの重さは増すのだが、生き生きしてはいないというのが惜しい。

■「買い」か?

NXに対する第一印象としては、どうしてレクサスはこれほどまでに動力系のアピールを制限したのだろう、というフラストレーションに尽きる。

内外装の質感は素晴らしいし、ドライビング・ポジションに優れる広々としたキャビンにも好印象だ。そのうえ大きな荷室や、ワイヤレス充電器など使い心地と勝手に優れるテクノロジーも大歓迎だ。

したがって動力性能の欠点に目を瞑る事ができるならば、長所は長所として多くのオーナーを満足させることができるだろう。最後に結論、普通に運転するだけならばNXはなかなかに良い。ただしクラス覇者のBMW X3とは程遠い。残念だ。

(マーク・ティショー)

レクサスNX200t Fスポーツ

価格 £35,000(610万円)
最高速度 200km/h
0-100km/h加速 7.1秒
燃費 12.0km/ℓ
CO2排出量 189g/km
乾燥重量 1735kg
エンジン 直列4気筒1998ccターボ
最高出力 238ps/1800-5600rpm
最大トルク 35.7kg-m/1650-4000rpm
ギアボックス 6速オートマティック

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