ロンドンからメキシコへ辿り着ける? 1970年ワールドカップ・ラリー挑戦マシン 後編

公開 : 2022.07.17 07:06  更新 : 2022.11.01 08:49

MGB(1968年)

オーナー:ジョン・ワトソン氏、グラハム・ディックス氏、マイク・バークレイ氏

様々なクルマがエントリーしてきたマラソンラリーだが、ジャン・デントン氏がドライブしたMGBも好成績を残した。ロンドン・メキシコではないが、ロンドン・シドニー・マラソンラリーを完走した唯一の2シーター・モデルだ。

MGB(1968年)とジョン・ワトソン氏、グラハム・ディックス氏、マイク・バークレイ氏
MGB(1968年)とジョン・ワトソン氏、グラハム・ディックス氏、マイク・バークレイ氏

そのラリーでは、MGカークラブのオーストラリア支部も支援。ラジエーター交換を途中で実施したという。

しかし完走したMGBの行方は、その後わかっていなかった。2015年、ガレージのコレクションを処分しているという、とある英国人からMGカークラブがEメールを受け取るまでは。

一見するとノーマルで、状態の良くないパープルに塗られたMGBは、調査でデントンがドライブしたクルマだと判明。カークラブのメンバーはレストアを決意するものの、当時の写真だけでは情報が足りなかった。

そこで当時コ・ドライバーを努めた、トム・ボイス氏へ協力を仰いた。「トムは英国南部、ギルフォードの介護施設で暮らしていました。沢山の情報を提供してくれましたが、残念ながら完成前に亡くなりました」。と、ジョン・ワトソン氏が振り返る。

トムは、ガソリンが良質とはいえない地域でMGBを走らせ続けるため、多くの努力を投じていた。結果として標準のガソリンタンクの他に、トランク内にも予備タンクを載せ、さらに携行缶を2本積んだ姿が蘇った。

BBCのラジオ4を聞くための、長いラジオアンテナも特徴。これは、ドライバーを務めたデントンの希望だったそうだ。

カークラブのボランティア・メンバーによって復元されたMGBは、2018年に開かれたロンドン・メキシコ・マラソンラリーの50周年イベントへ参加。現在もカークラブによって大切に維持され、2022年の今回も登場するに至った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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