先の見えないジャガー 将来の見通しが明らかに 2025年までの計画とは

公開 : 2022.06.29 19:25

新デザインはすでに決定 近くテスト走行も

――「無のコピー(a copy of nothing)」というのは、新しいジャガーがこれまでのモデルとデザイン上の繋がりを持たないということを意味しているのでしょうか?

「具体的なお話はできませんが、ブランドの中身を考えると、新旧の繋がりが見えてきます。ジャガーが常に生み出してきたエモーションを要約し、それを現代のプロダクトでどう表現するかを考える。わたしにとっては、新型ディフェンダーで行ったことに似ています。あのときは、旧型に邪魔されることはありませんでした」

「最近、当社はジャガーの価値をいくつかの言葉に集約しました。内容は明かせませんが、ブランドの絶対的な純度を維持するためのものです」

――ジャガーの新デザインが社内で承認されたというのは本当ですか?

ジャガーFペイスの特別仕様車「SVRエディション1988」
ジャガーFペイスの特別仕様車「SVRエディション1988」

「はい、すべてのポートフォリオを承認しました。今は最終熟成の段階です。生産に向けたサーフェシングのほか、エアロダイナミクスや冷却といった実用的な要素に対応し、クルマを生産する準備を整えているところです。しかし、プロダクトにほとんど変更を加えないという会社の基本原則には忠実です。わたし達の仕事は、素晴らしいデザインを実現することだと考えています」

――ハードウェアやソフトウェアの開発は、どのような段階まで進んだのでしょうか?

「最初は、パートナー企業のプラットフォームを利用することを検討しましたが、オーダーメイドのアーキテクチャでなければ、『無のコピー』という目的を達成できません。しかし、すでに持っている要素を使って、プロセスを効率化することはできます。プロトタイプに関しては、レンジローバー・スポーツのボディを使って、今後2~3か月の内に走らせる予定です」

挑戦のリスク 価格は製品が決める

――2024年までにコンセプトカーを見せてくれるのでしょうか?

「わたしはコンセプトが好きで、社内でもたくさん話してきたことなので、もしかしたら何か発表するかもしれません。しかし、ジャガーの新戦略と同様に、わたし達はどのように発表するかを『再考(Reimagine)』しなければならないでしょう」

――最近のクルマで、新しいアーキテクチャ、新しい形のパワートレイン、新しい生産システム、新しいマーケティング戦略を持ち、新しいタイプの消費者向けに作られたものはありません。そのリスクは認識されていますか?

「リスクにはチャンスも含まれると考えています。いずれにせよ、現状を維持することの方が大きなリスクでした。当社は、ディフェンダーのように、まったく違うことをしなければならないのです」

1960年代のジャガーの代表的なスポーツカー「Eタイプ」
1960年代のジャガーの代表的なスポーツカーEタイプ

「新型車は本当に素晴らしく、非常に示唆に富んだ提案であると言えます。デザインスタジオで新型車を目にするたびに、思わず息をのみます。しかしそれは、ジャガーがこれまでも常に持っていた魅力なのです」

――どのジャガーも20万ポンド(約3300万円)もするのでしょうか?

「価格を決めるのは発売直前で、何年も先のことですが、クルマをどのように位置づけようとしているかはよく理解しています。優れたプロダクトは自ずから価格が決まる、というのがわたしの考えです。いくらで売るかは、わたし達の仕事の質にかかっているのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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