【詳細データテスト】シボレー・コルベット ミドシップ化で磨いた走り 高い実用性 唯一無二の存在感

公開 : 2022.07.02 20:25  更新 : 2022.07.11 09:21

走り ★★★★★★★★☆☆

スポーツカーの値段で買えるスーパーカーというコルベットのポジショニングが、以前よりやや弱くなってしまっているのはやむをえない。1700kg近いウエイトに482psのパワーでは、最新のフェラーリランボルギーニに肩を並べることはできない。C8の設計やスタイリングなら、期待してしまうところではあるのだが。

それでも、このC8を存分に速く走らせることができるドライバーは少ないはずだ。しかし、その数少ない腕利きなら、パフォーマンスに物足りなさを覚えるだろう。

競合する911にはタイム的にやや及ばないが、数字だけがコルベットの魅力ではない。OHVユニットのサウンドは、搭載位置が変わってもすばらしいサウンドを楽しませてくれる。
競合する911にはタイム的にやや及ばないが、数字だけがコルベットの魅力ではない。OHVユニットのサウンドは、搭載位置が変わってもすばらしいサウンドを楽しませてくれる。    LUC LACEY

計測したタイムは、このクラスのロードテストで現時点のランキングトップに位置するポルシェ911カレラS PDKにわずかながら及ばなかった。C8より150kg軽いカレラSは、すべての項目でより速いタイムを出している。

それでも、0−97km/hが3.9秒というのはみごとなもの。0-100km/h公称値の3.5秒には届かないが、かなりパンチの効いた加速を味わえる。また、変速ありの48−113km/hは3.2秒で、カレラSとの差はコンマ5秒もなく、アルピーヌA110レジャンドGTよりはコンマ7秒早い。

もちろん、コルベットの走りの魅力は、数字だけで語れるものではない。路上で見せるその神秘性を生んでいる大きな要素が、プッシュロッドV8にあるのは新型でも変わらない。その位置が、これまでのつま先の延長線上から、頭の後ろへ移っていてもだ。

低速では混ざりけのない、チャターとタペットのすばらしいリズムを刻み、回転が上がるにつれ金管と木管のオーケストラが加わるようにサウンドが盛り上がっていく。本当に力強いと感じるには4000rpmあたりまで回さなければならないが、レッドラインの6600rpmまでそれが盛り上がり続ける。

サウンドはすばらしく甘美で、間違いなくスムースだ。いらだったような音や、目立ちたがりの爆音ではない。朗々たるシンプルな、耳にうれしい音を聞かせてくれるのだ。

ブレーキペダルのフィールや効き具合の変化具合はみごとで、サーキットでも十分通用する制動力も持ち合わせる。フェードにも強い。

反面、8速DCTのギアボックスには、ちょっとばかり煮詰めの甘さが感じられる。911GT3式に、両パドル同時操作でクラッチを切れるので、サーキット走行で高いレベルのコントロール性に貢献するだろうし、公道上ではスムースに変速する。しかし、どのセッティングでも、シフトダウンが期待したほどスムースではない場合も見受けられる。

Dレンジに入れっぱなしにすると、クルージングではやたらとシフトアップし、そこから加速しようとすると、適切なギアを探して無駄に変速する。これは、最新の多段トランスミッションにありがちな傾向だ。

しかしこのクルマのギアボックスは、キックダウンでの明確なレスポンスを生むため、ペダルを大きく踏み込むと3段程度のスキップシフトも行う。さらにマニュアルモードで低めのギアを選んで走れば、すなおで走りを楽しめるデバイスになってくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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