時空を支配するNA V10 ランボルギーニ・ウラカン・テクニカへ試乗 速さはSTOの95% 後編

公開 : 2022.07.06 08:26

間もなく生産終了となるウラカンの、最終仕様の1つでマイルド版STOと呼べるテクニカ。英国編集部が評価しました。

通勤にも使える特別な時間のためのクルマ

ランボルギーニウラカン・テクニカのドアを開くと、カーボンファイバー製の内装パネルが、まず出迎えてくれた。インテリア全体は、ダイナミカと呼ばれるスウェード調の素材で、隅々まで印象的に仕立ててある。

センターコンソールには、コネクティビティ機能が充実した新しいインフォテインメント・システム用の、大きなモニターが備わる。簡単な単語入力で検索できるナビや、アマゾン・アレクサがベースの音声操作システムが実装されている。

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(欧州仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(欧州仕様)

車内空間は、低いルーフ高のおかげで、人間工学的には完璧とはいいにくい。特に身長が185cm位ある筆者の場合は、視界や快適性が良好とはいえない。ただし、これもランボルギーニの特徴といえなくもない。

もっとも、ランボルギーニ側もユーザー層も、主に日常的なクルマとして使うことを前提にはしていないだろう。スーパーカーとは、特別な時間のためのクルマだ。その存在を祝うためにある。

実際のところ、ランボルギーニ側も無骨なロールバーや、身体にフィットするスポーツシート、ブリヂストンのサーキット用タイヤといったオプションを用意している。ウラカン・テクニカを注文する人の多くが、選択するだろうと期待している。

それでいて、通勤にも使えなくはない。ドライブモードには、ストラーダ(一般道)とスポーツ、コルサ(レース)という選択肢が用意されている。日常か非日常かを、ドライバーは選ぶことができる。

時空を支配する5.2L V10の音響体験

ストラーダ・モードを選べば、STOよりしなやかでマナーは良好。相対的には。スポーツを選ぶと、エグゾーストノートにアフターファイヤーのバラバラという破裂音が交じる。大排気量の自然吸気ユニットならではといえる、咆哮のボリュームも大きくなる。

その圧倒的な音響は、ドライビング体験の魅力の重要なパートを担っている。テクニカへ乗る人の、時空を支配するように。

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(欧州仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(欧州仕様)

パワーデリバリーは極めて迅速でリニア。自然吸気だから、現代のスーパーカー級といえる加速力を引き出すには、4500rpm以上まで回す必要はある。そこから8000rpmまでは、極めてパワフルでドラマチックだ。

スーパーカーが積むエンジンでも、これほどの興奮を誘うユニットは限られる。ランボルギーニのV型10気筒とのお別れは、間違いなく迫っている。その日が来たら、筆者も酷く悲しい気持ちになるに違いない。

スポーツ・モードではスタビリティ・コントロールの介入が控えめになり、四輪操舵システムの反応が鋭くなる。タイトコーナーを、より機敏に回り込んでいける。ただし、理想的なスーパーカーが備えるような、突出した敏捷性までは備わっていない。

カーブの続くワインディングを走れば、後輪駆動と四輪操舵システムの組み合わせにより、操縦性の軽快感がプラスされているのがわかる。だが、本当の輝きを呼び起こすには、相当に攻め込んだ運転が求められるという点は変わらない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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