グリルが象徴の時代は終わる? 最新レクサスは、スピンドル「ボディ」がブランド・アイコンに

公開 : 2022.07.03 05:45

グリルが、自動車ブランドのデザイン・アイコンだった時代は終わるのでしょうか? 最新レクサスの2台は、スピンドルグリルの表現をクルマ全体に広げています。

スピンドル「グリル」からスピンドル「ボディ」

執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)

トヨタの高級ブランドとしてレクサスが北米で展開を始めたのは、1989年。

デザインの基本理念には「L-finesse(エル・フィネス)」というキーワードがあったが、抽象的理念で具体性には乏しかった。当時のレクサス車のデザインは比較的地味なものが多く、上品ではあったが個性に欠けていたのも事実。

レクサスの新型車「RZ」は、EV専用モデル。写真は「RZ 450e」。
レクサスの新型車「RZ」は、EV専用モデル。写真は「RZ 450e」。    宮澤佳久

そこで、BMWのキドニーグリルやアウディのシングルフレームグリル、ロールス・ロイスのパルテノン・グリル、アルファ・ロメオの盾型グリルなど、ひとめでレクサスと分かるフロントマスク=グリルが模索された。

そして2012年に発表された4代目のGSから採用されたのが、「スピンドル(紡錘)グリル」だ。

それ以前のモデルでは上下2分割グリルで上が逆台形、下が台形だったのだが、4代目のGSでは上下のグリルを繋いだ形状でインパクトのあるデザインとなった。

発表当時は賛否両論あったスピンドルグリルだが、「継続は力なり」というわけでもないが、GS以降に登場するモデルに採用され続けることで見慣れてきた感もあり、もはやすっかり「レクサス=スピンドルグリル」の公式が定着してきた。

それから10年。

顔から先のボディまで 「RZ」と「RX」

2022年4月、レクサスはブランド初のEV専用モデル「RZ」を発表した。

EV専用モデルであるから、エンジン冷却用のラジエーターは不要となる。したがって、EV専門メーカーのテスラのようにフロントグリル・レスでもクルマとしては成立する。

左がエンジンを搭載する新型「RX」。右がEVの「RZ」。いずれもスピンドルボディという新たなデザイン手法を採り入れた。
左がエンジンを搭載する新型「RX」。右がEVの「RZ」。いずれもスピンドルボディという新たなデザイン手法を採り入れた。    宮澤佳久

だが、レクサスのアイデンティティであるスピンドルグリルをどうするのか。

レクサスデザインのPCD(プロジェクト・チーフ・デザイナー)である草刈穣太氏によると、いかに「塊(かたまり)」としてスピンドルを作っていくかに注力したという。

グリルから一体化してボディを作っていき、ボンネット前端が少し飛び出した独特のグラフィックだけでなく、“フードも含めた一体として”スピンドルの形に造り上げていった。

こうして生まれたのが、RZの「スピンドルボディ」だ。もはや、スピンドルは顔つきだけでない、ボディ全体となったのだ。

そして、新型RXだ。ハイブリッド車なども設定されるとはいえ、RXはエンジン車だ。

当然ながらラジエーターは装備しているし、ラジエーターを冷却するためのフロントグリルは必要だ。

だが、RZでスピンドルボディに進化したデザインを、再びスピンドルグリルに戻していたのではデザインに進化はない。

記事に関わった人々

  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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