グリルが象徴の時代は終わる? 最新レクサスは、スピンドル「ボディ」がブランド・アイコンに

公開 : 2022.07.03 05:45

近くで見る 融け込んでいくグラデーション

「できるだけ塊としてボディを一体に見せたい。冷却に本当に必要な開口はどのくらいなのかを考えると、レクサスのLマークの真ん中から下側くらいがあればいいと分かったんです」と、草刈氏。

だが、上はグリル不要とバツンと切ってしまうと、かつての台形グリルのようになってしまう。

新型RX(プロトタイプ)のフレームレスグリル。上部がグラデーションのような表現に。
新型RX(プロトタイプ)のフレームレスグリル。上部がグラデーションのような表現に。    宮澤佳久

そこでスピンドルの上側はグラデーション的に穴が開いているように見せ、ボディとグリルを融合させた新たなアイデンティティが生まれた。これが、レクサスRXの「スピンドルボディ」だ。

グリルはフレームレスとなっている。グラデーションのデザインにはフレームがあると違和感があり、フレームレスとしたことでボディにスムーズになじんでいる。

最近、プジョーホンダなど、他メーカーでもフレームレスグリルを採用するモデルが登場しているが、「2次元的なグラフィックから塊に見せるには、フレームレスグリルのほうがいいと思います」と、草刈氏。

SUVはグリルの縦幅もあるから、より立体感を強調するにはフレームレスグリルのほうが似合うのかもしれない。

役割が変わればカタチも 将来は?

草刈氏は続ける。「クルマが電動化に向かっている現在、いつまでも冷却開口であるグリルに顔のアイデンティティを頼ってはいられません」

となれば、これからのクルマ、少なくともレクサスのデザインはどう変わっていくのだろうか。

こちらはEVのレクサス「RZ」の前席内装。外観だけでなく、車内にも新しい試みが見られる。
こちらはEVのレクサス「RZ」の前席内装。外観だけでなく、車内にも新しい試みが見られる。    宮澤佳久

「いまのクルマは、機能からこのデザインになった、というものが多いです。今後は、どう機能が変化するか。例えば自動運転のセンサー類など、その機能に応じた新しいチャレンジで、顔つきやグリルなどのデザインが変わっていくでしょう」と草刈氏。

ところで、レクサス車にはスピンドル以外にもデザインのアイデンティティはある。

たとえば、L型のシグネチャーランプと3眼ヘッドランプ。このデザインには特に方向性はないと草刈氏は言うのだが、最近のモデルは3眼ヘッドランプを目立たせなくしている傾向にある。

L型シグネチャーランプ以外はブラックアウトして、昼間ランプが点灯していない状態でも、シンプルにL字型だけを見せるようになっている。

また、リアのエンブレムはその「L」のマークから「LEXUS」ロゴに変えられている。

後ろから見ても、新しいデザインに

これも「シンプルでクリーンにしたかった(草刈氏)」ということもあるが、丸いエンブレムを付けることでデザインに制約があることも事実。

丸いエンブレムを付けるためには、ある程度のスペースは必要だし、一文字のテールランプを新たなリアのアイデンティティにしてシンプルに見せるには、やはり「L」マークでは……というわけで、新しいチャレンジとなった。

新型RX(プロトタイプ)のリアセクション。「L」マークではなく「LEXUS」のロゴを採用した。
新型RX(プロトタイプ)のリアセクション。「L」マークではなく「LEXUS」のロゴを採用した。    宮澤佳久

そのリアの一文字テールランプにも、レクサスならではのこだわりがあった。

スピンドル形状の流れが続くボディのサイドビュー、“車両の軸”となる位置からリアに回り込んだ高さに、一文字のテールランプは装着されているという。

前述のように、グリルがクルマのアイデンティティとなる時代は終わりを迎えつつある。いまや、グリルをブランドのアイコンとしてきた多くのメーカーは、試行錯誤で悩んでいる。

そんな中、いちはやく「グリル」から「ボディ」にアイデンティティを変革させたレクサスは、やはり先見の明があったといえるだろう。

記事に関わった人々

  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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