9歳女児はなぜ「車外放出」されたのか? フェラーリとスズキ・ワゴンR事故 原因を取材 広島・福山市
公開 : 2022.07.03 06:25
シートベルトは身長150cmを過ぎてから
事実、日本の自動車メーカーの純正ジュニアシートはすべて、ヘッドレストや背もたれがついて身長150cmまで安全に使用できる構造だ。
なお、背もたれがない座面だけの簡易ブースターシートも安全基準(ECE R44/04)を満たしているが、こちらは2017年より身長125cm、体重22kg以上での使用が義務付けられている。
チャイルドシートの義務年齢(5歳まで)を過ぎたらすぐさまチャイルドシートを外して良いというわけではもちろんなく、身長100-105cm位までは幼児用、その後、身長125cmくらいまでは背もたれのある学童用ジュニアシートを使用し、シートベルトが正しく着用でくる150cmまでは(できれば背もたれ付の)ジュニアシートを使って乗車させることがドライバーや保護者の義務である。
広島での事故が起こる約1か月前の5月22日、北海道・空知の南幌町でトヨタ・エスティマが道路を逸脱して側溝に転落する事故があった。
運転者含めた4名は重軽傷で済んだが助手席に乗っていた小学3年生男児だけが車外に投げ出されて意識不明の重体となってしまった。
助手席でシートベルトをしていたというが、関係者からは「シートベルトが男児の身体にあっていなかったのではないか」という声もある。
たしかにその可能性が高いだろう。
小学3年生男児の平均身長は130cm前後であるから側溝に転落した衝撃でシートベルトの間から身体がすり抜けて、車外に放出された可能性が高い。
どの席に座ろうとも身長150cmを超えるまではシートベルトだけでは危険だ。
周囲の大人はそれを知っておくべきだし、子ども本人にも教えるべきだ。
女児放出の原因 警察に聞いてみた
ワゴンRから放り出された女児は実際、どのような状態で乗車していたのだろうか?
広島県警察に取材依頼をしたところ、許可を頂くことができた。
担当している福山東警察署に電話をしてみた。
――大変痛ましい事故ですが、9歳の女の子はジュニアシートを使っていたのでしょうか?
「運転していたおじいさんは今も入院中で事故当時の状況などの話は聞けていません」
「骨盤骨折という重傷を負っており、またコロナ感染拡大防止を理由に家族も含めて面会ができない状況です」
「シートベルトやジュニアシートを使っていたか? どの席に座っていたのか? ということなどは確定できていません」
「しかし、亡くなったお子さんが車外に出ていたという状況から判断してシートベルトを正しく着用していなかった可能性が高いと考えられます」
「なお、おじいさんはシートベルトを着用していたことがわかっています」
――フェラーリの速度はどれくらい出ていたのでしょうか?
「現在、ドラレコを解析しているところです。速度や安全確認の状況なども調べています」
――フェラーリ側が直進なので優先になりますか?
「直進する側が優先にはなりますが、そうであっても曲がろうとしている(右折しようとしているワゴンR)車両がいるのであれば、安全確認する義務が発生します」
「速度が何キロ出ていたのか今は不明ですが、一般的に優先される直進側が法定速度内で走行していても注意を怠って相手側の乗員が死傷した場合は『自動車過失運転致死傷罪』(運転上必要な注意を怠って人を負傷または死亡させた場合に成立する罪)になります」
――この交差点(まなびのやかたローズコム西)は右直の事故が起こりやすい場所ですか?
「多発しているわけではありません。しかし、これも一般的に言われていることですが、右直の事故は直進側がオートバイや車高の低いクルマである場合、右折する側が直進車のスピードを見誤る例が多いのです」
「車高が低いクルマの場合は実際の位置よりも遠くに見えるため、まだ大丈夫だと思って右折し、衝突事故となるケースがとても多いのです」