ヴィンテージ・サウンドに包まれる タルボ・ラーゴT26 GSL パリ製の4.5L直6 後編
公開 : 2022.07.23 07:06
ドライなヴィンテージ・サウンド
T26 GSLを発進させると、タッチの良い操作感がドライバーを満たしてくれる。サウンドも心地良い。活発に運転したいと思わせる、五感への訴えがある。許されるなら。
時間を掛けて温まったエンジンからは、ドライなヴィンテージ・サウンドが聞こえてくる。特に滑らかというわけではないが、トルクフルで、シフトチェンジを繰り返しながらの走りはたくましい。
シフトチェンジのスピードは、シフトセレクト・ペダルと呼ぶべき、クラッチ・ペダルをどれだけ強く踏むかで変わる。コーンクラッチと遊星ギアの機械的な唸りが、車内へ聞こえてくる。
ボディは大柄ながら、T26 GSLはコーナリングも小気味いい。ボディロールは示すものの、車内からは感じにくい。直径の大きなステアリングホイールのリムへは、細いタイヤが掴む路面の状況が鮮明に伝わってくる。繊細には回しにくいけれど。
タルボ・ラーゴは、4速へシフトアップしたがるように積極的にスピードを乗せていく。トルクフルなエンジンは少々にぎやかなものの、上級なグランドツアラー然としたスタイリングとの愛称が素晴らしい。
ふくよかなボンネット越しに景色を楽しむなら、優しい太陽が照らすフランス郊外の並木道がピッタリだ。ロマンティックな高速クルージングを、過去にもT26 GSLは楽しんできたことだろう。
優れた技術者でも維持できなかった競争力
魅力的なクラシック・クーペをドライブしていると、これを生み出したアンソニー・トニー・ラーゴ氏のことを思い浮かべずにはいられない。クルマが売れる以上に多額の予算を必要とし、優れた技術者でも充分な競争力を維持することはできなかった。
基本設計の古さは、それまでのモータースポーツでの名声で、ある程度は補っていた。信頼性の高いタルボ・ラーゴが残した戦績によって、彼はレギオン・ドヌール勲章を受けることにも繋がった。
今はなきシムカがタルボ・ラーゴを買収した翌年、1960年に66歳でこの世を去ったトニー・ラーゴ。多くの業績を残してきた彼にとっても、自動車ブランドの立て直しは容易なことではなかった。もう少し若ければ、違っていたかもしれないが。
協力:カー・バーン社
タルボ・ラーゴT26 GSL(1953〜1955年/欧州仕様)のスペック
英国価格:−(新車時)/35万ポンド(約5845万円)以下(現在)
販売台数:19台
全長:4775mm
全幅:1850mm
全高:1590mm
最高速度:196km/h
0-97km/h加速:12.0秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1610kg
パワートレイン:直列6気筒4482cc DOHC自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:213ps/4500rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速プリセレクター・マニュアル