FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 前編

公開 : 2022.07.24 07:05  更新 : 2022.08.08 07:06

フォードのV6エンジンを、FRPボディに搭載したギルバーン。英国編集部が少量生産のスペシャル・モデルをご紹介します。

自分のための多用途なスペシャル・モデル

FRP技術の向上で、スペシャル・モデルと呼ばれる簡素なスポーツカーを生み出す小規模メーカーが、1950年代に英国では数多く生まれた。ある程度の技術と資金を持つクルマ好きの殆どが、オリジナル・マシンを作ろうとしたと思えるほど。

なかでも商業的な成功を収めた1つが、グレートブリテン島の西部、ウェールズ地方で誕生したギルバーン。現実的な目標でスタートし、15年間に約1000台を販売している。

ギルバーン・ジェニー(1966〜1969年/英国仕様)
ギルバーン・ジェニー(1966〜1969年/英国仕様)

肉屋を営んでいたジャイルズ・スミス氏と、元ドイツ兵のバーナード・フリーズ氏によって、ギルバーン・スポーツカー社が設立されたのは1959年。コーリン・チャップマン氏などのように、技術分野で能力を高めてきた人物ではなかった。

2人が思い描いたのは、自らのための多用途なスペシャル・モデルを1台作ろうというアイデア。平日は仕事に使えて、週末にはスプリントレースやヒルクライム・イベントに挑戦できるようなクルマが理想だった。

製造品質は同時期のスペシャル・モデルより優れていたが、公道用レーシングカーと呼べるほどの内容ではなかった。小柄なFRPボディにブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)のエンジンを載せた1台が、ギルバーンGTの始まりとなった。

その可能性へ気が付いたのが、スミスと仕事上で関わりを持っていた、レーシングドライバーのピーター・コットレル氏。実際、2台目のGTを購入している。

角パイプ・シャシーにフォードのV6エンジン

クルマの成り立ちは、正方形の断面を持つスチール製角パイプで組まれたシャシーに、見た目の良いFRPボディをリベットで固定したもの。リア・サスペンションは、リジットアクスル。エンジンや駆動系には、BMCの既存部品が流用されていた。

ボディの品質には拘られ、パネルの精度を高めるため、ほぼ一体成型で仕上げられていた。当時の英国では、自ら組み立てるキットカーには自動車購入時の税金が免除されていた。市場は、ギルバーンの面白さに気が付き始めた。

ギルバーン・ジェニー(1966〜1969年/英国仕様)
ギルバーン・ジェニー(1966〜1969年/英国仕様)

そして、スミスとフリーズのアイデアが、高次元で具現化されたモデルが開発される。1966年から1974年にかけて製造された、ジェニーとインベーダーという2台だ。6気筒エンジンを搭載し、最高速度190km/h以上という性能が備わっていた。

BMCからは、ドライブトレインの卸値での提供を以前から渋られていた。1966年に、フォードからエセックスと呼ばれるV型6気筒エンジンがリリースされたことで、2人の考えが方向付けされた。

比較的軽量なV6エンジンは、138psを発揮。ウェールズ地方で作られるスペシャル・モデルに、グランドツアラー級の能力を与えた。小さな自動車メーカーとして、ギルバーンは1966年のロンドン・モーターショーで、華々しいデビューを果たした。

装飾性が抑えられたスタイリングを持つジェニーは、それまでのGTより若干長く、車重もかさんだ。そのかわり、多くのスペシャル・モデルとは異なり、まともなリアシートが備わっていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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