FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 前編
公開 : 2022.07.24 07:05 更新 : 2022.08.08 07:06
160km/hの高速クルージングも快適
3.0Lのフォード製V6には、高効率のエグゾースト・マニフォールドが組まれ、5psの出力向上を達成。キャブレターはウェーバーの40DFAで、オイルクーラーも備わっていた。発表時には2.5Lエンジンも用意されていたが、人気がなく廃版となっている。
ギルバーンが週末のガレージで組み立てられると主張したキット価格は、1425ポンド。塗装まで仕上がったボディに、オーナーがエンジンやトランスミッション、ビニールレザー張りのインテリアなどを組み付けることで、完成車より460ポンド安かった。
少なくない英国人が、自宅での組み立てを楽しんだ。完成したジェニーは、安全性の確認と初回の無料点検のために、ギルバーンへ招待された。
ハザードランプにリクライニングシート、電動エンジンファン、消化器、調整式のリアダンパー、ツイン燃料タンクなどが標準装備。オプションとして、英国オペルの部品を用いたパワーウィンドウも装備可能だった。
車重は1t前後と軽く、24.9kg-mの最大トルクを受け止めるため、ZF社製のリミテッドスリップ・デフも追加できた。人気のオプションだったのがオーバードライブ。1000rpm当たり43.4km/hの比率で、160km/hでの高速クルージングも快適にこなせた。
シャシーの設計は、基本的にはGTのキャリーオーバー。MGB由来のフロント・サスペンションと、フロントがディスク、リアがドラムというブレーキ構成だった。
1週間に6台の生産で10か月の納車待ち
生産初期の40台は、オースチン・ヒーレー譲りのリアアクスルが理由で、ワイヤーホイールを履いていた。MGCのリアアクスルへ変更されると、オリジナルのアルミホイールへ切り替えられている。
英国内に用意されたディーラーは4か所。自動車メディアの試乗レビューは上々で、1970年代が始まるまでに年間50台前後の注文があったという。ジェニーの最終的な生産台数は、約200台だといわれている。
一方でスミスとフリーズは、ギルバーンをエース・キャピタル・ホールディングス社へ1968年に売却。10万ポンドを投入し、1日1台のジェニーを生産するという野心的な計画が立てられた。
1969年にはジェニーの改良版、インベーダーが登場。強化されたシャシーに、MGCのフロント回りが組まれていた。見た目の違いは、ボディ面に一体化したドアハンドルと小さなテールライト程度だが、初期には採用されていないからややこしい。
インテリアの変更は大きく、デザインが新しくなり、ダッシュボードにはソフトパッドとウッドパネルが与えられた。安全性へ配慮されたステアリングホイールと、2速ワイパーも装備する。
1969年には、スポーツクーペのフォード・カプリ3000GTも発売されている。キット販売のインベーダーの方が500ポンド高かったものの販売は好調で、約10か月の納車待ちだったらしい。
実際、1971年に更新されたインベーダー Mk IIは、1週間に6台というペースで生産されていた。ボディの成形型が1台だけで、それ以上の増産は難しかっただろう。
この続きは後編にて。