FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 後編

公開 : 2022.07.24 07:06  更新 : 2022.08.08 07:06

フォードのV6エンジンを、FRPボディに搭載したギルバーン。英国編集部が少量生産のスペシャル・モデルをご紹介します。

フォードの部品を全面的に流用したMk III

中期型となるギルバーン・インベーダー Mk IIをMk Iと見分けるポイントは、トライアンフ・スタッグと同じドアハンドルと、ボンネットに切られたエアベントの形状。パワーウインドウが標準装備になり、シャシーは剛性が高められ操縦性も改善していた。

Mk IIの生産数は約300台といわれており、100台はステーションワゴン。150ポンドを追加すれば、折りたためるリアシートと大きなテールゲートを装備することもできた。

ギルバーン・インベーダー Mk I(1969〜1971年/英国仕様)
ギルバーン・インベーダー Mk I(1969〜1971年/英国仕様)

1972年にはインベーダー Mk IIIを発表。フロントグリルが大きくなり、肉厚なタイヤに小径のホイールが組まれ、オリジナルのジェニーからコンセプトは大きく変化していた。

すべてのMk IIIは工場生産されており、ステーションワゴンも存在しない。フロントサブフレームはフォード・コルティナ用で、サスペンションはダブルウイッシュボーン式。カプリに積まれるV6エンジンが載り、オーバードライブが標準装備となった。

リアアクスルはコルティナ用で、幅の広いトレッドに対応するため、リアフェンダーは拡大。ホイールは13インチと小さいものの、ブレーキはサーボで増強されていた。

テールライトはフォード・エスコート用で、ステアリングラックはコルティナ用。ルーフは、当時流行したブラック・ビニールで仕立てられている。

この背景にあったのは、自動車に掛けられた一律10%の購入税。キットカーに対しても適用されることになり、生産を合理化する必要性があった。価格競争力を高めるため、部品は全面的にフォードへ頼ることになった。

ジャガーXJ6に並ぶ価格という現実

その頃にはディーラー数が27箇所へ増え、Mk IIIは約220台が売れている。生産期間は1年程度だったから、かなりの人気だったといっていい。

1973年、戦争をきっかけに原油不足のオイルショックが世界を襲う。燃費の良くないギルバーンは、コアなファンによって支えられていた。それでも、ジャガーXJ6に並ぶ価格という現実から、逃れることはできなかった。

ギルバーン・インベーダー Mk II エステート(1971〜1972年/英国仕様)
ギルバーン・インベーダー Mk II エステート(1971〜1972年/英国仕様)

販売を北米や中東へ拡大する計画があったものの、実現しなかった。インベーダーのロング・ホイールベース版や、ミドシップのT11といった新モデルの計画も、夢に終わった。

受注リストに希望者の名前が残るなか、新しい投資家は見つからず、ギルバーンは1974年3月に生産を停止している。それでも、オーナーに友好的だった同社の姿勢もあって、今も熱心なファンが英国には残っている。

オーナーズクラブの設立は1969年。公道やサーキットで、自らのマシンのポテンシャルを発揮したいという人にも、ギルバーンは積極的に協力してきたという。その結果、ジェニーやインベーダーで改造されていない例は少ない。そもそも生存台数も少ないが。

今回、オーナーズクラブの会長を務めるブライアン・ゲント氏は、オリジナルに近い4台を集めてくれた。ゲント自身も、ホワイトのインベーダー Mk Iを持ち込んでくれた。

レッドのジェニーは、ウィン・ジョーンズ氏がオーナー。バーガンディのステーションワゴンは、ガレス・フランコンブ氏のインベーダー Mk IIで、シルバーのMk IIIは、マーク・ジョーンズ氏の愛車だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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