FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 後編

公開 : 2022.07.24 07:06  更新 : 2022.08.08 07:06

往年のマセラティのような雰囲気

4台を並べると、ジェニーはベルトーネ社が手掛けたアルファ・ロメオ 105シリーズのクーペとイメージが重なるようで驚いた。落ち着いて眺めると、往年のコーチビルダー、ヴィニャーレ社の手掛けたマセラティのような雰囲気を、どれもが放っている。

ステーションワゴンは、リアから見るのがベスト。サイドウインドウが不自然に垂れているから、サイドビューが美しいとはいいにくい。それでも、ハイスピードで走れるワゴンとして、インベーダー・エステートには訴求力がある。

ギルバーン・インベーダー Mk III(1972〜1974年/英国仕様)
ギルバーン・インベーダー Mk III(1972〜1974年/英国仕様)

インベーダー Mk IIIは、ギルバーンの苦難の時代に生まれた。大径ホイールで見栄えするジェニーやMk IIと比べると、年老いている。シルバーのボディで着飾っていても。

ワイヤーホイールと、シンプルなクロスとレザー張りのダッシュボードを備えるレッドのジェニーは、4台で特に魅力的。オーナーのジョーンズは、1960年代に友人が買ったキットの組み立てを手伝って以来、ギルバーンに好意を抱くようになったという。

きれいにトリミングされたドアの内装パネルや、オリジナルのレザー巻ステアリングホイール、クロームメッキ・リングの付いたスミス社製メーターなど、ディティールの良さを彼が説明する。マセラティのようだとも話す。

インベーダー Mk IとMk IIの内装にも見るべき点は多いが、Mk IIIのセンターコンソールはパッド入り。メーターには控えめなカウルが付いている。安全性に配慮されたスイッチ類も並び、他の3台にはない高級感が漂う。

ギルバーンの運転は期待以上に楽しい

運転してみると、13インチ・ホイールが支えるインベーダー Mk IIIは、1番コンパクトな印象を受ける。エンジンはたくましく、高回転域まで回したり、こまめに変速する必要はない。

ドライな3.0L V6エンジンのノイズとともに、威勢よく速度が増す。アクセルレスポンスは鋭い。

ギルバーン・インベーダー Mk III(1972〜1974年/英国仕様)
ギルバーン・インベーダー Mk III(1972〜1974年/英国仕様)

ルーフを支えるピラーは細く、運転席からの視界は良好。Mk IIIには背もたれの高いスポーツシートが備わり、着座位置も低められている。ステアリングホイールのリムは太く、意外にも洗練された走りを味わえる。乗り心地も良好だ。

シフトレバーは、後ろ側から伸びる中折れ式がギルバーンの特徴だが、Mk IIIは一般的なもの。想像よりシフトフィールは滑らかで、3速から2速へのシフトダウン時に若干癖があるものの、すぐに慣れてしまった。

V6エンジンの太いトルクを活かし、変速をサボっても問題ない。3速と4速で選べるオーバードライブに入れて、ゆったり流すこともできる。

全長4039mm、全幅1651mmという小柄な見た目から想像する以上に、ステアリングホイールは重い。そのかわり、ハイレシオで回頭性はクイック。アンダーステアは適度に抑え込まれ、コーナーを滑らかに旋回できる。

正確なアクセルレスポンスとステアリングフィール、挙動を感じ取りやすいシートとの組み合わせで、シャシーの能力をしっかり探れる。ギルバーンの運転は、期待以上に楽しいものだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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