1953年のル・マン優勝マシンを復刻 ジャガーCタイプ・コンティニュエーションへ試乗

公開 : 2022.07.15 08:25

ル・マン24時間レースで優勝したXK-120C、Cタイプをジャガーが復刻。英国編集部が仕上がりを確かめました

ブランドのル・マン初勝利から70周年

スピードを出さなくても、このクルマが持つ栄光の歴史の断片を味わうことができる。黒光りするブレーキペダルを蹴飛ばすと、レーシンググリーンのジャガーは驚くほどの勢いで減速した。

スチール製のディスクと、ダンロップ社製の油圧キャリパーは、効果的に熱エネルギーへ変換してくれる。1953年のル・マン24時間レースを優勝に導いた要素の1つが、この強力な制動力だった。

ジャガー・クラシックCタイプ・コンティニュエーション
ジャガー・クラシックCタイプ・コンティニュエーション

ジャガーXK-120C、通称Cタイプは、1951年に初挑戦したル・マンでも優勝を掴んでいる。さほど驚異とはならなかったライバルに対して、その時はドラムブレーキで挑んだ。

70年前の話題で恐縮だが、今回試乗が許されたクルマは、そのCタイプの復刻版。ジャガーが正式に手掛けたコンティニュエーション・モデルで、21世紀の技術を活かしXK-120Cが現代に蘇った。

製作する動機付けになったのが、自社のル・マン初勝利から70周年を迎えることだった。その歴史を知っていた方が、このクルマの意味もより理解できると思う。

これまでにもジャガーは、コンティニュエーション・モデルを複数生み出している。XKSSやDタイプ、Eタイプ、Eタイプ・ライトウエイトなどが、少量ながら復刻されてきた。Cタイプは、その最新版となる。

英国での販売価格は3億円以上

予定されている生産数は16台で、英国での販売価格は180万ポンド(約3億60万円)。既に8台ぶんの申込みがあったそうだが、今なら残りの1台を入手できるかもしれない。金額を用意できれば。

復刻版とはいえ、クルマ1台に対しては桁違いといえる金額ではある。だが、53台が作られたオリジナルのCタイプをオークションで落札する場合は、300万ポンド(約5億100万円)はくだらない。それと比べれば、現実的な値段とはいえるだろう。

ジャガー・クラシックCタイプ・コンティニュエーション
ジャガー・クラシックCタイプ・コンティニュエーション

実際、Cタイプ・コンティニュエーションを運転すれば、その金額の理由が見えてくる。XK用の3.4L直列6気筒エンジンは、ブロックから再制作されている。1950年代の航空技術が応用さられた複雑なディスクブレーキ・システムも、現代技術で再現してある。

オリジナルの設計図をデジタル化し、現存する実車両も計測することで、ディティールにも抜かりはない。雛形として選ばれたのは、1953年のル・マン24時間レースを優勝したマシン、そのものだという。

そのCタイプには、トリプルウェーバー・キャブレターを搭載した直列6気筒エンジンが搭載され、最高出力は208ps以上を発揮したといわれる。復刻版は218psで、車重は1063kgしかないから、現代でもパワーは充分以上といっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ブレンナー

    Richard Bremner

    英国編集部
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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