AMGらしさの難しさ メルセデスAMG EQE 53へ試乗 686psと516kmのBEVサルーン
公開 : 2022.07.19 08:25
エアサスによる印象的なまでの姿勢制御
更に、標準装備のエアサスペンションが、印象的なまでの姿勢制御を実現している。車重は2600kgと驚くほどだが、穏やかな高速道路のクルージングから、意欲的に駆け抜けるワインディングまで、見事に処理してくれる。
重量のかさむ駆動用バッテリーが、シャシーの底部に並べられていることで、コーナリング時には重心の低さを実感する。EQE 53は、スルスルとノーズの向きを変えていく。
タイトコーナーを攻め込むとボディロールは生じるが、それも限定的。AMGの技術者によれば、このシャシーには必要ないため、アクティブ・アンチロール機能は搭載されていないという。
急な旋回を求めると、EQEの車重を感じることもある。カーブの続く道を積極的に走らせていると、重いクルマだということを隠しきれない。
スタビリティ・コントロールが若干緩くなるスポーツ・モードへ切り替えると、四輪駆動システムはリアタイヤ主軸でトルクを与えるように変化。道幅に余裕があれば、引き締められたシャシーの能力を目覚めさせることもできるだろう。
強い負荷がサスペンションへ掛かるような場面でも、乗り心地が乱れることはない。日常的な条件下の、コンフォート・モードでの洗練性も秀逸といえる。
メルセデスAMGは、オプションとしてカーボンセラミック・ブレーキを用意している。回生ブレーキが電気へ変換できる運動エネルギーは、最大260kWということだが、加速力を考えれば制動力は強いに越したことはないかもしれない。
BEVの技術的には非常に見事
高速ラグジュアリー・サルーンとして、同社がAMGたらしめる要素の1つだと主張するのが、人工的にデザインされたサウンド。スピーカーを介して、車内と車外へ走行音などを発する機能が搭載されている。
EQE 53の走行速度やアクセルペダルの角度などに応じて、音質やボリュームが変化する。静止時も、内燃エンジンのアイドリングのように、脈動する音が聞こえてくる。
エンジン音を模したものではなく、ジェットエンジンやダース・ベイダーのライトセーバーが発するノイズに近い。これが効果的だと感じるかどうかは、人それぞれだ。
内燃エンジンの音は、多少デジタル的に増強されていても、さほど不快に感じることはない。一方で完全に人工的な音には、リアルさが足りないというか、実態性が伴わないように思う。ハードコアなEQE感は演出できていたが、AMGらしいといえるだろうか。
BEVに対し、走りが静かで上質過ぎると不平をいうのは、的外れだとは思う。慣れの問題もあるだろう。しかし、サウンドやヴァイブレーションは、運転を楽しませる要素として重要だということも、事実ではある。
今後、BEVが解決すべき課題といえる。優れた頭脳を持つ技術者が、素晴らしい答えを導き出してくれることを期待したい。
メルセデスAMGが手掛けたEQE 53は、BEVの技術的には非常に見事だといっていい。その反面、身体の内面にまで響いてくるような、従来のAMGとは異なることも事実。動力性能で劣る、EQE 43も確かめてみたいところだ。