XC90はいかにしてボルボを救ったのか 中国企業買収に電動化 勤続38年のベテランに訊く
公開 : 2022.07.10 18:05
ボルボに30年以上勤めている幹部にインタビュー。ジーリーの買収や電動化など、その在籍期間を振り返ってくれました。
XC90の重要性 もし失敗していたら…
ボルボは今年末、XC90に相当するゼロ・エミッションの大型電動SUVの発売を控えている。企業として成長し、電動化や自動運転など新たな時代を迎えている中、ボルボに38年間勤務したベテラン社員は何を思うのか。
英AUTOCAR編集部は、長年ボルボに勤め、まもなく退社予定のコマーシャル・オペレーション部門の責任者レックス・カーセメーカーズにインタビュー。ボルボのこれまでの歩みと今後の展開について語ってもらった。
――ボルボには30年以上勤めていらっしゃいますが、その中で経験した最も大きな変化は何ですか?
「わたしにとって最も重要な出来事は、フォードからジーリー(吉利)に移ったことです。2000年当時、米国資本だったボルボでは、バッチエンジニアリング(OEM供給)、部品の共有、プラットフォームの共有、1つの工場で複数のモデルを生産することなどが非常に一般的でした。フォードで学んだことは、ブランドと製品戦略が明確でなければ、大企業の中で簡単に衰退してしまうということです」
「その後、2010年にジーリーに買収されたんです。フォードの経営状態が悪く、ビジネスが行き詰まったんです。わたし達は失敗から学び、自分たちの価値観を守り続けることにしました。もしジーリーがボルボに全権を与えなければ、つまり「あなた方が必要と思うクルマを開発しなさい」と言わなければ、わたし達は今のような成功を手に入れることはできなかったでしょう」
「これはボルボにとって、大きな大きな変化でした。2010年から2015年まで、新しいポートフォリオに取り組みました。当時、4気筒ターボにダウンサイジングするのは馬鹿げていると誰もが思ったものですが、今ではどこにでもあるものです。そして、プラグインハイブリッドで電動化への第一歩を踏み出しました」
――ボルボが最近発売した中で最も重要なクルマは何ですか?その理由も聞かせてください。
「2015年のXC90です。ジーリーの下で最初に出したクルマで、最も難しいクルマでした。新しいデザイン路線として、既存のお客様と新しいお客様にアピールする必要があったからです」
「当時のボルボは年間45万台を販売しており、80万台に向かっていくには強いアピールが必要でした(昨年は70万台弱を販売)。新しいデザイン、新しいプラットフォーム、新しいエンジンプラットフォーム(4気筒に移行)、これらの組み合わせがうまくいく必要があったのです。もし失敗していたら、イメージはガタ落ちだったでしょう」