XC90はいかにしてボルボを救ったのか 中国企業買収に電動化 勤続38年のベテランに訊く

公開 : 2022.07.10 18:05

野心的な成長目標 EVへの移行は

――ボルボは、2020年代半ばまでに120万台の販売目標を掲げています。軌道に乗っているのでしょうか?BMWのように200万台を目指したいですか?

「わたし達は適切なポートフォリオを持ち、適切な勢いもあります。供給制限のため目標が不明確になっていますが、生産した分を販売するわけですから、生産台数を増やせば、目標は達成できると強く信じています」

「わたし達は長期的な予測をやめ、月ごと、あるいは長くても四半期ごとに判断しています。以前、2022年半ばには供給問題が改善されるはずだと言いましたが、突然上海が閉鎖され、サプライチェーン全体に混乱が生じました」

ボルボのコマーシャル・オペレーション部門責任者、レックス・カーセメーカーズ氏
ボルボのコマーシャル・オペレーション部門責任者、レックス・カーセメーカーズ氏

「BMWのレベルは決してボルボの目標ではなく、120万台が当面のゴールです。成長と収益性のバランスを常に考えていかなければなりません」

――バッテリーサプライヤーであるノースボルト社(スウェーデン)とのパートナーシップは、ボルボのEV移行にどのように役立つのでしょうか?

「開発スピード、コンピテンシーの共有、それから生産拠点に近いトロールシャッテンの当社敷地内でバッテリーを生産することによるコスト効率化です。ノースボルトは、バッテリー開発に関する優れた技術を持っており、それを非常に早い段階から取り入れることができます。新型車の開発段階では、最新の知識を得る必要があります。ある段階を過ぎると、あとからは何も変えられず、9年間はその技術に縛られることになるからです」

――ボルボが考える理想のEV走行距離とは、どの程度でしょうか?

「350kmから450kmの間くらいでしょうか。一度にそれ以上走る人はほとんどいません。わたし達はまだ、バッテリーの大型化、重量の増加、そして適切な航続距離のバランスを模索しています。多くの自動車メーカーが450kmを達成するには、まだ時間がかかると思います。700kmは、よほど大きなクルマでないと意味がないと思うのですが」

「2025年までには、充電インフラが整備されるでしょう。8分から20分で充電できるようになれば、ちょうどいい利便性になります」

新型EVのデザイン 自動運転はどうなった?

――ボルボは、従来の店舗でも、オンラインでも購入できます。いつからオンラインだけになるのでしょうか?

「英国ではいくつか重要な試験を実施しています。今年末には、(英国における)売上の40%がオンラインになると思われます。消費者の習慣は急速に変化しており、クルマはどこでも同じ価格であることが好まれます。市場の準備が整えば、完全に反転させるつもりです」

――XC90XC60に相当するEVがまもなく登場し、既存の内燃エンジン車と並べられることになります。それらは異なるスタイルになるのでしょうか?

「2015年にデザインの方向性を大きく変えたので、もちろん違いはありますが、まだ同じ世代にあります。未来に進めば進むほど、より劇的な変化が起こるでしょう。内燃機関向けではないクルマをデザインすることができるのです。EVだけにフォーカスし始めた瞬間、新しいデザインが出てます」

――自動運転では何が起きているのでしょうか?

XC90に相当する大型電動SUVは、ボルボの電動化を大きく前進させるだろう。
XC90に相当する大型電動SUVは、ボルボの電動化を大きく前進させるだろう。

「数年前、2020年か2022年までに完全な自動運転車が登場すると言われたときは、ボルボを含め自動車業界全体が非常に楽観的でした。今は5年前よりもずっとややこしいことになっています」

「しかし、わたしがいつも言っているのは、ボルボの目的は自動運転車を走らせることではなく、クルマをより安全にすることだ、ということです。自動運転技術は人間のあらゆるミスを取り除いてくれます。わたし達の次世代SUVは、より安全なクルマに向けて大きな一歩を踏み出すことになるでしょう」

記事に関わった人々

  • 執筆

    レイチェル・バージェス

    Rachel Burgess

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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