絶妙の公道セッティング BMWアルピナB4 グランクーペへ試乗 495psの直6 前編

公開 : 2022.07.17 08:25  更新 : 2022.07.18 10:07

BMW傘下化が決まったドイツの名門、アルピナ。現体制による最新の4ドアクーペを、英国編集部が評価しました。

目利きのための目立たないクルマ

ドイツの独立した名門ブランドだった、アルピナ。60年近い歴史を持つ同社は、2022年3月にBMW傘下へ収まることが発表された。その事実は、モデル名にも既に表れている。

今回試乗したクルマの正式名称は、BMWアルピナB4 グランクーペという。冒頭に、今後親会社になる名前が追加されている。とはいえ、新しいB4 グランクーペのレシピは、今まで通りではある。

BMWアルピナB4 グランクーペ(欧州仕様)
BMWアルピナB4 グランクーペ(欧州仕様)

少なくとも現在はMモデルが存在しない、4シリーズ・グランクーペをベースに、技術者集団のアルピナが高速化させた特別なモデルだ。ビジネス・スタイルには、今のところ変わりはない。

同社のプロダクト・マネージャーを務める、トーマス・ハックスピル・コルヌ氏の言葉を借りるなら、「目利きのための目立たないクルマ」。まさに、従来のアルピナのままといえる。

思い切りのサーキット走行も可能ながら、一般道を主軸にセッティングされた、速く、控えめで繊細なロードカー。普段の道を、速く走るために作られている。

滑らかな4ドアクーペのボンネットに収まるのは、最高出力495ps、最大トルク74.2kg-mを発揮する、3.0L直列6気筒ツインターボ・エンジン。そこに、8速ATと後輪が主役の四輪駆動システム、xドライブが組み合されている。

英国では8月から販売が始まる予定で、価格は8万663ポンド(約1347万円)から。日本へも導入が決定している。

300km/hも74.2kg-mも公道のため

筆者のように古くからのクルマ好きにとって、4ドアクーペというモデルは少し中途半端な存在にも思えがち。だが最近は、2ドアクーペよりビジネス規模の大きいカテゴリーへ成長している。

BMWによれば、4ドアのBMW M440i グランクーペと2ドアのM440i クーペを比較すると、販売台数は3:1という比率で大差を付けているという。アウディのRS5 スポーツバックも、2ドアのRS5と同等の割合で売れている。

BMWアルピナB4 グランクーペ(欧州仕様)
BMWアルピナB4 グランクーペ(欧州仕様)

ちなみに、現在の4シリーズ・グランクーペでは、このBMWアルピナによるB4がRS5 スポーツバックの直近のライバルに該当する。そのため、通常のアルピナとは微妙にセッティングが異なるようだ。

さて、アルピナのオーナー像としては、ドイツ・フランクフルトから400km離れたミュンヘンまで飛行機や電車を使うのではなく、自らクルマを運転するような人が含まれる。平滑なアウトバーンを使って。

300km/hの最高速度も、2500rpmから湧き出る74.2kg-mの極太のトルクも、そのために与えられている。しかし今回、BMWアルピナが用意してくれた試乗コースは、ドイツ北部のノースライン・ウェストファリアにあるサーキットのみだった。

このビルスター・ベルク・サーキットは、広い敷地に滑らかな路面が敷設され、多彩なコーナーが混在している。操縦特性の限界を見極められるベスト・コースの1つといえる。短時間に、多くの負荷をクルマへ与えていける。

動的能力を確かめられることは間違いない。とはいえ、せっかくのアルピナだから、公道を走りたいと思ったことは事実だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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