懐かしのイタリアン・ロードスター アルファ・ロメオ・スパイダー & フィアット・バルケッタ 前編
公開 : 2022.07.30 07:05
ボディラインがインテリアへ流れ込む
大学を卒業したてだったカヴァッツァは、フィアットの既存部品を巧みに組み合わせながら、自身が「柔らかい繭」と表現する、優雅なものへ発展させた。
「様々な要素を結びつける、流れるようなラインが必要でした。特定のポイントでフェードアウトさせることで、柔らかさを生み出しています」。と、彼は後に説明している。
ボディラインがインテリアへ滑らかに流れ込むというアイデアは、ドアパネルだけでなく、ダッシュボードなど全体の曲面にも影響を与えている。目線より下のエリアにも、ボディとの呼応が見られる。
バルケッタの生産を任されたのは、コーチビルダーのマッジョーラ社。トリノ郊外の、ランチア・デルタを製造していた工場を改修して進められた。
フロントエンジン・フロントドライブのフィアットは、手頃なスポーツモデルを欲していた自動車ファンにヒット。英国でも、動力性能で勝り右ハンドル車を選択できたマツダMX-5(ロードスター)と並んで、1995年から好調に注文を集めた。
ところが、2002年にマッジョーラ社は破産。フィアットのミラフィオリ工場へ生産を移し、フェイスリフトでリフレッシュを加え、2003年にフェイズ2の後期モデルとして市場を満たした。
トランクリッド中央にブレーキライトが追加されたのは、最終年の2005年。10年間に、合計5万7571台がラインオフしている。
特徴的なサイドラインと4灯ヘッドライト
他方、アルファ・ロメオの916型GTV クーペとスパイダーは、プラットフォームを共有するバルケッタよりひと回り大きい。仕立ても豪華で、英国価格は2万110ポンドが付けられた。それでも、BMW Z3などよりはお手頃だった。
ピニンファリーナ社に在籍していたエンリコ・フミア氏がスタイリングを手掛け、後方に向けて上昇し、ボディを囲むショルダーラインが特徴。そのラインは大きなクラムシェル・ボンネットの開口部へ繋がり、大胆なフロントマスクを構成している。
ボンネットに穴が空き、そこから4灯のヘッドライトが光るアイデアは、1981年に自ら手掛けたアウディ・クワトロ・クオーツ・コンセプトにまで遡る。その後、日産セフィーロのスタイリングで検討されたが、コストを理由にキャンセルされたようだ。
インテリアは、ピニンファリーナ社のジュゼッペ・ランダッツォ氏が防水性を持つデザインをスパイダー用に考案するが、承認には至らず。アルファ・ロメオ内で描かれたGTVクーペのものへ、軽く手直しされるに留まった。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式で、リアがマルチリンク式。4ドアサルーンの155とも一部の部品を共有している。高負荷時にリアタイヤへ僅かに舵角が生まれる、巧みな設計が施されている。
ステアリングにも、アルファ・ロメオがラピッド・レスポンスと呼んだ、高度な技術が与えられている。旋回時のレスポンスを高めるレシオ特性で、ロックトゥロックは2.2回転に設定された。小回りは得意ではなかったけれど。
この続きは後編にて。