懐かしのイタリアン・ロードスター アルファ・ロメオ・スパイダー & フィアット・バルケッタ 後編
公開 : 2022.07.30 07:06
見た目以上に窮屈ではないインテリア
アルファ・ロメオ・スパイダーは、アレックス・ペイン氏がオーナー。1996年式の右ハンドル車だ。アルファ・マニアでもある彼は、プロテオ・レッドのボディや同色で塗られたサイドシル・パネルなどの特長から、最初期のクルマだと考えている。
「2012年に、妻の60歳の誕生日として前のオーナーから購入しました。2000年までは社有車で、走行距離は13万km弱だったようです」
現在は22万kmを超えたが、ペインも含めて、これまでの丁寧なメンテナンスのお陰でヘタリは感じられない。「何年もアルファ・ロメオを楽しんできました。シルバーストーンへのドライブや、プレスコット・ヒルクライムへの参戦は忘れられません」
「2016年に、オランダのアルファ・ロメオ・クラブが開いたイベントへ参加したことは、素晴らしい思い出です。多くのアルファ・ファンと一緒に、ザントフォールト・サーキットを走り、素晴らしい時間でした」。とペインが頬を緩ませる。
今も古びて見えないバルケッタは、小さなドアハンドルまで同様。心地よいクリック感を伴って、ドアが開く。コンバクトなサイズながら、車内は思ったほど窮屈ではない。
ドライバーズシートが心地よく身体を包み込み、操作系のレイアウトは良好。ペダルが手前側に位置するのは、イタリア車の伝統でもある。
サスペンションは適度にしなやかで、ステアリングホイールは軽い。すぐに、起伏のある道を流したいという気分にさせてくれる。だが、高速で、とは思わない。カーブを描くボンネットに郊外の景色が反射し、バックミラーに遠ざかる並木道が映り込む。
2速で明らかになる4気筒エンジンの素性
ステンレス製エグゾーストが放つ音色が心地良く、エンジンを回したくなる。操縦系の感触の良さは、高速域でも変わらない。ホイールベースの短いバルケッタは、コーナーを小気味よく縫っていく。
ボディロールは小さくないものの、ソフトなスプリングとタイトなシャシー構造が融合し、荒れた路面を滑らかにいなす。舗装の剥がれた穴を通過しても、印象は悪化しない。
アルファ・ロメオ・スパイダーは、バルケッタより大柄。ドアもインテリアも、フロントガラスも大きい。そのぶん、操作に対するダイレクト感では劣る。車重が重く、サスペンションは引き締められていて、エンジンの慣性も目立つようだ。
シートはレザーで仕立てられ、インテリアの雰囲気は落ち着いている。ドライバーの正面に埋め込まれた黒い盤面のメーターも、そんな感覚を強める。
2速へシフトダウンして、アクセルペダルを踏み込むと、バランス取りされた4気筒エンジンの素性が明らかになる。スムーズなだけでなく、エネルギッシュさも秘めている。
クイックなステアリングに、洗練されたサスペンション設定が融合。変化の大きい道でも安定して進んでいく。
同時に、おおらかな個性も匂わせる。フィアットの弾くように軽快なシフトフィールや、踏みごたえのあるペダル類とは対照的。アルファ・ロメオのシフトレバーは長くストロークし、ブレーキペダルにも曖昧さがある。